24日。
給料日前日だ。
Tは仕事で千葉まで行かなければならず、チャージする交通費1000円を残しておいた。
残った予備費は少しの小銭のみだ。
昨夜・・・
T「明日さ、帰りに誘われるかもしれないんだよね…」
飲み会の事らしい。
都内まで戻らなければならないからとか、断りようはあると思うのだが、ぐっと堪えて言わなかった。
T「郵便局の通帳とカード持って行くしかないかな。」
来た。
ボーナスでスッカラカンになった後に、小遣いの繰り越しを入金したので、普通口座に1500円入っている。そして、ボーナス時に定期に入れた三万円が、辛うじて残っている。
総合通帳は、定期の8割位まではキャッシュカードで引き出せてしまう。
普通預金の欄にマイナスが付き、利息も発生する借金だ。
Tの持つ口座は、債務整理の際にすべて解約、或いは残高0にしたから、この郵便局の口座が唯一だ。
繰り越しが出た月末、賞与の月、アタシはたとえ千円でも、即日入金して来た。
貯めた小銭を持って、郵便局の階段を上り、数えてもらって入金するのは、大したことでは無いが、それでも小さな労力だ。もう何回往復したろうか・・
返済をを始めてから、10回以上は通っている。入金総額は16万近い。
これはTのお金であるが、電機シェーバーを買うなら良いが、スロットに使われてしまうと、小さな労力分の空しさを感じるわけだ。
せっかく入金したのにと、やはりがっかりする。
ギャンブルに使わないでねと言うのは簡単だが、ギャンブルという言葉を使わないと決めたので、今回も言わなかった。
しかし、なにがしかのメッセージは伝えなければならない。
通帳には、記帳するだけではなくて、文字を書き込んだり出来る事はご存じだろうか?
ATMに反応しなくなるのではという心配はなく、通帳には鉛筆やマーカーで書き込むことが出来るのだ。
そこで、昨日の内に、アタシはTの通帳にグリーンの色のマーカーで、入金した欄全部に線を引いておいた。
渡した通帳を見て、Tは少し驚いた様子だった。
T[これは?」
アタシ「その印がある日に、アタシ入金したの。この1年間に入金した金額は、グリーンの金額を足せば判るよ。だいたい15万ちょっと。」
T「15万も無いでしょ?」
アタシ「よく見て。後ろのページの定期預金欄にもグリーンがあるでしょう?それがボーナス時の入金だよ。足すと15万超えるはずだよ」
そのうちの12万強をギャンブルに使ったことは言わない。
沈黙が流れた。 貯めた金額を把握していないのだ。
アタシ「普通預金の所にマイナスが付かないとイイね。」
マーカーは5色持っている。
グリーンにしたのは、色の効果を考えたからだ。
虹の中の真ん中はグリーンで、中立をイメージさせる。
そして、刺激が少なく、安心感と心の安定、落ち着きを感じさせると言われている。
お金を引き出す時には、カードだけでは無くて、記帳するように伝えてある。
開けば、グリーンのラインが見えるはずだ。
せめて、マイナスが付かないように踏みとどまることが出来るだろうか。
落ち着いて、考えながら使うんだよ、せっかく貯められた月もあるんだから。
このメッセージが届くかどうかは判らない。
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