2017年8月23日水曜日
お世話になります89歳
かれこれ10年は経とうか。
和服関係の仕事でお世話になって居るおじい様がいる。
判らないことは訊けば、何でも教えてくれて、訊いていないことまで教えてくれる上に、雑談もその倍以上あるから、なかなか電話を切るタイミングがつかめない。
どこでどう学んだのかは知らないのだが、おじい様は89歳にして、見事にパソコンを使いこなすのだ。
そして、ブログまで書いていたのだが、その抱腹絶倒のブログが、3年ほど前に更新を止めてしまった。
昨日、用事があって電話をした。
アタシ「Kさん、ブログ、また書いてください。とても楽しみにしていたのに残念。お願いだからまた更新してくださいませよ。」
Kおじい様「あれはブログじゃなくて恥を書いてるだけ。恥はもう書かんよ。」
実はKさんのブログには、まだ元気でご健在の奥様だけでは無くて、お嬢様お二人に、お孫さんまで、全員が登場して、家族模様が赤裸々に書かれていた。
時には、家族以外の事も書いていた。
おまけに、顔だけ塗りつぶした画像もちょくちょくアップされるのだが、その塗りつぶしがズレているものだから、プライバシー保護どころか、顔まで晒してしまっている状態だった。
ご家族は、Kおじい様がそんなことをしているなんて知らなかったようだが、知られてしまったら、絶対にクレームが来るだろうと、涙を流して笑いながらも少々心配していた。
だから、更新がストップした時には、きっと家族にバレちゃったのだと察しが付いた。
しかし、家族にバレて、こっぴどく怒られた事が原因で更新できなくなったなんてことは、Kおじいさまにとっては、これも恥だから、言わない。
恥はもう書かんの一点張りだ。
Kおじいさまは、日常の事を、その会話の細部まで詳細に書いてしまうので、家族にしてみれば、気づいて読んだ時には相当驚いたと思う。
それを想像するだけでも、笑えるのだが、書かれた奥様達にしてみたら笑っている場合では無かったろう。
特に奥様だ。
Kおじい様がおっしゃるには、私が結婚しようと言ってやらなかったら、この人は絶対に絶対に未だに独身なはずだそうで、それは結婚したおじい様にしか分からない事だけれど、とにかく、おじい様が結婚をしようと言ってやったから、今があるのだそう。
そのくらいに、決めるのが苦手で、余程の力で説得してやらなければ、何事も前に進まない人なのだと、こういう説明だ。
つい先日も、趣味に使う作業テーブルが欲しいというから、おじい様は 二トニ(ニトリだと思う)やリサイクルショップを車で走り回って、それで半日が潰れたけれど見つからず、帰宅後に、アマゾンで良い寸法のを見つけたらしい。
半日は棒に振ってしまったけれど、アマゾンで見つけたんだからおじい様のお手柄だ。
そこで、その画像を奥様に見せたら、「あら、あったのね。」そう言ったのだそうだ。
あらあったのねじゃないと、おじい様は話し続ける。
あったんだから、早速買う手続きをしなけりゃ、見ているだけではいつまでたってもテーブルは運ばれてこないと説得したらしい。
そうしたら、「すぐじゃなくていいのよ」と。
こういうところが、おじい様が結婚をしようと言わなかったら、一生独り身のままだったはずの証拠なのだそうだ。
テーブルを探し求めて走り回るときも、おじい様は和服だ。
汗だくな姿を想像すると、どうしても笑いがこみあげてくる。
おせわになります、89歳のKおじい様。
ご家族には内緒で、恥を書いて下さい。
どうかお願いしますよ。
* 電話は、ちょっとした用事で小物を送っていただいたのだが、中にプレゼントが入っていたお礼。そのプレゼントは、おじい様のお宅の近くで、急に閉店する事になった婦人服のお店があり、閉店なら安いに違いないと買いあさって来たら、奥様も娘さん達も着ないというから、あんたの所でなんとか着なさいというプレゼントでした。
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