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2019年11月10日日曜日

ある男の物語 駄々ゴネ老人

思い通りにならないと駄々をこねる。
まるで子供のようにゴネてゴネまくる。
これは若い頃からの事だけれど、還暦を過ぎた男が駄々をこねる様子は異様である。

初めては、結婚した時だった。
経済の基盤は必須だと話し合い、結婚を機に、お互いに演劇の世界から足を洗う約束をして入籍したのである。
しかし、その後もやめる気配は無く、ゴネが始まった。
生活を支えていたアタシは、どうぞと言わない。
そうしたら、ある日、劇団の先輩数人を伴って帰宅し、アタシを取り囲んで説得を始めた。
アタシは妊娠中で、その後流産したのである。

そんな不安定な中で、長女が産まれた。
大きい姉さんである。
産前は妹が泊まりがけで手伝いに来てくれた。
何故ならば、Tは、芝居の地方公演で不在だったからだ。
大姉さんが産まれた日も、まだ帰京していなかった。
退院数日後に見舞いに来て、不思議そうに新生児を眺めていた。
それから、お見舞いで頂いたお菓子や果物を食べて、なんと!残りを持ち帰ってしまった。
退院後数日して、また地方に行ってしまったのである。

産後1週間検診の後に、アタシは実家に里帰りをした。
そうして、母子家庭状態が続き、やっとTが戻った時には、大姉さんは3ヶ月になっていたのである。

演劇から離れる事に決まった時には、大姉さんが1歳半になっていた。
世の中はバブルで、六畳と三畳ふた間のアパートの家賃がじわりじわりと上がり始めたのである。

そうしてやっと今の職場に採用され、同時に郊外の団地に入居した。
そこで小さい姉さんが生まれたのである。

子供達が成長する間にも、小さな駄々が続いていた。

そういう人なのだと思えば、あしらい方にも慣れてしまうものだ。

しかし、別居後に正式に離婚をし、今回の同居で、その駄々ゴネを久しぶりに見て、年齢との落差に驚いてしまった。

退職を目前に控えた今、また最大級のゴネが始まったのである。

独立資金の金額だ。
この同居中に話し合っていた金額の、5倍以上をよこせと始まったのである。
オマケに、アタシには1円も渡さないと言う。

少しの上乗せではなく、5倍以上。
Tは、大姉さんと話すのが苦手だから、アタシしか居ない時を狙ってゴネるのである。
睨むは吐き捨てるは脅すような口調になるはで、アタシはすっかり疲弊してしまった。

そこで、弁護士先生との相談後、Tが最も苦手とする 大きい姉さんに交渉役の白羽の矢が立ったのである。

昨日夕方の事。

先生と大姉さんが電話で話し、状況を把握してもらった。

どうなるんだろうと、不安な気持ちで布団に潜り込んでいたら、深夜1時に、大姉さんが帰宅して来た。
忙しく、毎日深夜に帰宅するのである。
いつどんなタイミングで、Tと対峙するのかを決めなければと思っていたが、その時既に大姉さんは、今から始めますよ という目付き顔つきになっていたのである。

えっ!今からですかい?と思う間もなく、消灯していた部屋の電気がつけられた。

アタシは、怖がるパズーが発作を起こしやしないかと、ウロウロするしかない。
つまり、パズーが怖がる程、Tと大姉さんが向き合うのは凄まじいのである。

いびきをかいて寝ていたTが
叩き起こされる。

落とし所はどこなんだろう?
先生から、妥協出来る金額を聞いているはずだから、アタシは、Tの無謀な増額要求がどこまで落ちるのか、はたまた、流石の大姉さんも苦戦するはずだから、援護しなければと構えていた。
しかし、アタシが発言しようとすると、
アナタは黙ってて!と、大姉さんに言われてしまった。

ヘイヘイ、引っ込んで居りまする。

しかしである。
一向に減額交渉が始まらない。

大きい姉さんは、Tの希望額を、1円たりとも受け付けず、突っぱねて突っぱねて、ゴネるTに詰め寄り、反論の余地も与えず、徹底抗戦で追い詰めて行った。

後半戦で、大姉さんの作戦を理解したアタシは、もう結末がわからなくなってしまって、リビングの床に転がってみたり、また立ち上がってTの様子を隙間から見たり(寝起きを急襲されたTは、ベッドから立ち上がる時間も与えられなかったから)
チョロリと口を挟んでは、また大姉に静止されたりを繰り返していたのである。

すると、暫くして灯りが落とされた。

交渉は持ち越しか。

二言三言の会話の後に、また電気がつけられた!

再開か!再開なのか!

しかし、その時にはもう、Tが一筆書かされていたのである。
大姉さんから朱肉を受け取り、捺印までしている。

一切の増額無しで結構です というような内容が記してある。

今朝は、早々に、その内容を先生にメールで知らせ、念の為に、T
が書いた紙を画像にして添付した。

ゴネ以外に、Tには、決めたことを翻すという部分がある。
また何を言い出すかわからない。

しかし、帰宅したTは、憑物が落ちたように静かにはなっていて、この10日ほど続いていた険しい目つきも元に戻っていたのである。

諦めたらしい。
大きい姉さんには太刀打ちが出来ないから、駄々ゴネをやめたようだ。

今だ!今が最後のチャンスだ!
一気に合意書作成だ!

果たして、予定通りに年内に公正証書が完成し、独立なるか!?

 事実婚解消協議 大詰めを迎えでいるのである。

あぁ。。消耗するよ。

大きい姉さん、立派に育ってくれてありがとう。

貴女に勝てる男はいないと思いますので、独身を貫いて下さいね。

つづく

2019年9月20日金曜日

ある男の物語り 僕達という単位

弁護士先生からの受任通知を、食卓に置いておいた。

郵便物は目に入らないらしく、いつものように、帰宅後3分もしないうちに食事を始める。

仕方がないから、改めて封筒を手渡した。

アタシ「事実婚解消の協議ね、進まないから、私 弁護士さんを代理人にお願いしたの」

T 「そう。〇〇先生(任意整理の時の)は、忙しいもんね」

特に驚いた様子もなく、テレビを見ながら食べている。

アタシ「今後は、直接じゃなくて、弁護士さんを通してね。それと、最初はあなたから電話をいれてね。」

T 「連休あけの月曜日に電話する。火曜と水曜はずっと会議なのよ、僕」

それからまたご飯を食べて、ふとこちらを向いた。

T 「僕達の弁護士だよね?

アタシ「私の代理人。話し合う内容は双方に関することだけど、私の代理人弁護士さん」

T 「 僕の話しも聞いてくれるんだよね?」

僕達という捉え方は、間違ってはいないけれど、やけに嬉しそうというか、ホッとした様子なのが奇妙である。
大きな不安も無さそうで、むしろ良かった良かったと、そんな顔をしているのである。

僕達。

この人は、ずっと 僕達 という単位から 自立していないのかもしれない。

それが、早く結婚したせいなのか、Tが10代で母親を亡くしたせいなのか、実姉に溺愛されてきたせいなのか、或いは若干の発達障害のせいなのかはわからないけれど。

僕達は、いつも同じ方向を向いて生き、僕達は、大抵のことで相違ない考えを持ち、僕達は、僕達は、、、 運命共同体。

いずれにしても、協議に弁護士先生がついてくれた事は、T にとって 、大変喜ばしい事だったようだ。

先が思いやられる。

また、先生にタメ口で話したりしてしまうんだろう。
憂鬱。
そんな事を考えていたら、パズーが首を傾げた。

パズーにも何か違和感があるのかもしれない。
頭の良い犬だ。


T は、食事を終えてから、しきりに通帳を返してくれと言いだした。
銀行に、住宅ローンの相談をするからと。

そういう事も全部含めて協議するんだから、勝手に何かしないでねと伝えた。

つまり、協議が何かをよくはわかっていないらしい。

ある男の物語 最終章はどうなる事やら。

2019年6月25日火曜日

ある男の物語り  恐怖


 10日に賞与をもらったばかり。
何とか10万位を口座に入金して、これは出張だとかの際の臨時出費の為という事だったのだけれど。

昨年くらいから、出張以外でも使うようになり、今年に入ってからは、何度言ってもキャッシュカードを戻さなくなった。
明日返す、明後日返すと言い続けて、もう半月。

最近は、記帳するのが恐ろしくて仕方がない。
けれど、また先日みたいに 貸してくれと言われるのも恐ろしく、マメに記帳だけはするようにしているのである。

今朝はとうとうマイナスになっていて、3万程の定期を使い込み始めたという事。
もちろん、本人が言っている 断れない飲み会だけではない。
同じ日に何度も何度も引き出しているのは、ギャンブルに使っているから。

同居が始まった2016年3月から、必死に入金したのが475000円
これは計画通りで、定年までに50万程度の独立資金を貯めさせようと思ったからなのである。

小遣いと予備費もTは毎月使っているわけだから、本来だったら、入金した分がまとまった独立資金として残って居なければならなかったはずなのに。

11月末で定年を迎えるので、あと5か月の辛抱。
もう入金をする予定は無いし、何よりも記帳する事も日々の様子を見ている事も苦痛で、
なんだか空恐ろしくなってしまうのである。
一刻も早く離れなければ。
一刻も早く。


2018年4月17日火曜日

ある男の物語り 記憶障害

ギャンブルの無い年にしたいと工夫をしてきた が!
108日でスリップ。

帰宅するなり、「今日スリップしちゃった~」と言うのである。

今月は送別会が多く、予備費が足りない。だから昨日、支給される交通費をきちんと持ち帰る確認をした。

5000円は、あっけなくスロットに消えてしまった。

Tは今年60になるのだが、子供じみた言動が目につく。
見た目は衰えて来たから、ある意味で、年齢や見た目と言動のギャップが分りやすくなったのだと思う。

重度のギャンブル依存症は判っているが、今は自己愛性パーソナリティー障害の対処に苦慮している。

様々な分類があるのだが、Tの場合は、記憶障害が強いことを確信した。

調べてみると

[自己愛性人格障害の人が誰かに何か良い事をした事はずっと記憶として残りますが、誰かに良い事をしてもらった記憶は簡単に喪失してしまう為、相手に対して感謝する事が出来ません。(誰かから良い事をしてもらうのは当然の事である、という認識をしているせいもあります)

もし自分が他人に褒められる様な事があれば、いつまでもその記憶は持ち続け、何度でも周囲に褒められた事を自慢するという特徴もあります。

他にも、数分前の出来事であっても、自分にとって都合の良い記憶に改ざんする為、発言内容が数分前と比べて矛盾している事が多く、周囲の人を混乱させる事があります。]

とある。

Tの場合は、誰かに良いことをするという事は皆無に等しく、良いことをしてもらった記憶が残らない。
誕生日が良い例だ。

そして、ギャンブルをしてしまった記憶はと言うと、殆ど消えてしまうようだ。

極端に聞こえるかもしれないが、悔やむ気持ちが持続するのは1時間程度なのである。

これは致命的だ。
負けて嫌な気分になっても、今夜などは明るい顔つきで帰宅したし、ご飯も食べる。
行かない工夫の話をしているうちに、眠気が来てしまい、すぐにイビキをかいて寝ている。

落ち込んだり悔やむ気持ちから、鬱や不眠になることがあるが、食べられて眠れるから、全くその心配は無いのである。

しかし、ギャンブル依存から抜け出す為には、記憶してもらわないと始まらない。
悔いが無ければ、止める必要性を感じないからだ。

小遣いが底をついた。予備費も無い。
すると、500円玉の貯金箱を缶切りで開けている。

情けなくは無いのかなと見ていたが、「1万2千円貯まってた!」と誇らしげに言うのである。

自己愛性パーソナリティー障害を今から改善するのは至難である。

従って、ギャンブルに流出する金額を最小限にとどめ、記憶障害への対策を優先した方が良いのかもしれないと思うようになった。

受診させるべきか検討中なのである。

アタシは白髪になるに違いないと思う。

2018年3月18日日曜日

ある男の物語り 傾げた首が戻らない

それにしてもである。

自己愛性パーソナリティー障害が強く疑われるTであるが、本当にどう対応したものか…。

病であると判って、30年以上に渡って疑問に思っていた様々に合点がいったが、だからと言って、やはり言動の違和感は解消されないのである。

今夜はカレーだった。Tは大盛りを平らげた。
しばらくしたら、ガサゴソ音がして、続いてカリポリと聞こえてきたのは、お煎餅を食べる音だった。
大袋を抱えて食べている。
パズーが凝視していて、大きい姉さんの耳もダンボだ。
暫く様子を見ていたが、言わないのである。
「食べる?」この一言が出ない。

戴いた物は、いつも分け合って食べているのだが、Tの場合は、それが出来ない。
皆で食べようという気遣い、発想が無い。
カリポリ聞こえてくれば、誰だって食べたくなるし、共に暮らしていれば、「皆で食べようよ」と言うのが自然であり当たり前だ。

貰える物は貰って食べるが、自分が貰ってきた物は分けないのである。

だから、何かを分ければ「ありがとう」と喜んで居るのだが、こちらは分けてはもらえない訳だから、黙っているしかない。
貰ってもいないのに、ありがとうとは言えないからだ。

30キロのお米が届いたのだが、重くて運べないから、玄関に置いてある。
通常は運ぶのではないかと思うし、運んでくれればもちろんありがとうと言う。
しかし運ぶ様子は無いのである。
空き箱を捨てる決まりは守るが、お米が入った箱は空き箱ではない。
したがって、中身を出すまで空き箱にはならない。
つまり、Tにとっては、無関係の箱なのだ。

人の気持ちを慮る事が出来ず、相手の気持ちになって考える事が出来ず、共感も出来ない。
お煎餅を分けたら、皆も喜ぶだろうとは思いもしないのだと思う。

今はそれでも構わないが、大小姉さんが小さかった頃は大変だった。

新車を買うと、心は全て新車に集中するから、幼い二人が触る、ドアの閉め方が悪いと怒る。
4~5歳の子供には、静かにドアを閉めることなど無理である。
その事が判らない。
自分の愛車を乱暴に扱う敵という事になってしまう。

自分をほめてくれる人が好きなのも特徴的なのだが、一番多いのが声だ。
カラオケで歌を褒められると、歌手になりたいと思えてしまうし、褒めてくれた人が女性だったら、そのまま恋愛関係になれてしまうのである。

既婚者であるのに、誰にでも結婚を申し込んでしまう。
そうは簡単に行かない訳だから、大抵は別れることになる。
そうすると、相手の女性はひどく傷つくわけだが、別れた後は恋人では無いから、相手に与えてしまったダメージに対して悔いる事は無いのである。

自分の誕生日は覚えていて、誰かが何かを言ったりプレゼントをしてくれると感謝する。
通常は、その相手にお返しをするものだが、関心が無いから覚えていない。

この障害に向き合うのは骨が折れる。
日々の暮らしの中で、傾げた首が戻らない事が多々あるのである。
大きい姉さんと、どんまいどんまいと励ましあっている。

来月になると、債務の返済は20回目になる。
ただの一度も、無事に返済できているかを訊かれたことが無い。
債務整理をした時点で、この債務には関心が持てないに違いないのである。





2017年12月29日金曜日

ある男の物語り スロット納め?

先日、Tの姉から蜜柑が送られてきた。入院中の姉から。

賞与が出た頃から、再三、何か送ってくれと電話がなり、手紙も来ていた。

Tは、賞与から電気シェーバーとビジネスリュックを買い、餅代は二万円を徴収。

その他は、びた一文くれない。

休暇に入った今日、お菓子と衣類を送ると言って6千円持って出掛けた。

家事は一切手伝わない。

そして、9時半を過ぎて帰宅した。

「無事に送れたの?」

T「送れなかった」

全額スロットに寄付してきた。

秋もおわりの頃から、Tは、自分がギャンブル依存症だと自覚したような発言があった。

前回寄付した後の事。
それから、50日と数日で、おまけにこの年の瀬にスロットなのである。

人生をなめている。
人生を投げている。

自立した後に、ホームレスになるのはあっという間の事だろう。

あと2年。

Tを見ていると、得体が知れない怖さのようなものを感じるのである。

人はここまで投げやりになれるものだろうか?

実は、パズーにも変化がある。
同居を始めてから、一向になつく気配は無かったが、最近ますます、Tが起きたり動いたりすると吠えるのだ。

帰宅した時は更に凄い吠え方で、Tに立ち向かって行くのである。

動物の本能が、Tの何かを察知して、敵であると見なしているのだと思う。

明日にはケロリとして、なに食わぬ顔で年末年始を過ごすのだろう。

ギャンブルに行かせない日々を、私は、あと2年工夫し続けるつもりでいる。

こんな気分で今年を終わらせるのは、余りにも無念である。

だから、明日もいつも通りに、お節を作ろうと思っている。

2017年11月4日土曜日

ある男の物語り 胃袋との戦い

玄米食に変えて、よく噛む習慣をつけ、添加物などを使わない食材にしてはみたものの、悩みの種は、Tの食欲だ。

肉体労働では無いが、身体は大きい。
と言っても、背が高いだけで肥満ではない。

充分なカロリーと満足感を模索している。

今夜の鶏汁には、薩摩芋、長ネギ、小松菜、大根、人参、舞茸、油揚げ、それに、大きな鶏もも肉を二枚半使った。

直径30センチで、深さのあるフライパンでは、3リットルの汁物が出来る。

普通の汁椀1杯づつを、アタシと大きい姉さんが食べたのだが、作り過ぎたかと思ったのは大間違いで、ご覧の通りスッカラカンなのである。

「全部食べちゃっていいですか~」と訊かれて、駄目とは言えない。

しかし、一汁とは言っても、2リットル以上だ。

大きな丼で軽く3杯はある。

例えばこの食材を別のメニューにしたとする。

特大チキンソテー二人前に、野菜の副菜2品は出来る。

ご飯は、お昼におにぎりを持っていって、夜と合わせると、軽く2合は平らげている。

こうなると、胃袋との戦いなのである。

カレーの時が一番判りやすい。

レトルトカレーの10倍強は作るのだが、まず余らない。
余った試しが無いのである。

食べ盛りの高校生が二人居る感じだ。

此処へ来た当初は、もう昔みたいには食べられないと言っていた…が、衰えていない。

では、一人で暮らしていた頃は、何故、立ち食いそば屋の一人前で足りていたんだろう?

二人前頼むと、お金が二倍掛かるからだ。

家での食事には、レジでの支払いが無い。
見ていない所で買い物がされて、作られて、Tは食べるだけだ。

出張の時以外、帰宅すれば即ご飯。
休みは無いのである。

お金はあればあるだけ使う癖になってしまい、それをくい止めているわけだが、あればあるだけ食べる癖がついてしまったような気がする。

貴方の分はこれですよ と、いつもの定食にするしかない。

鍋とかカレーやシチューは要注意という事になる。

ギャンブルをしていない日が111日になった。

妙な空咳をしなくなり、健康を取り戻している。

新たな難題は、食欲なのである。

今日は明らかに食べ過ぎている。

その証拠に、食べ終わるやいなや睡魔に襲われて、食器も洗わずにベッドに倒れ込んだ。

唸るようなイビキが響きわたっている。

自転車を手に入れて、運動をするようになったら…。

特大おにぎり5個でも足りなくなるのではないだろうか?

来月59才。

恐るべし胃袋。

闘いは続く。

2017年9月20日水曜日

ある男の物語り 馬耳東風

借り癖、浪費癖が直らない。

後払いの出張手当6000円を、飲みとカラオケで使い果たして帰ってきた。

今月の飲み代は、もう毎月の小遣いをとっくに越えている。
それも、1000円、2000円と、人に借りて飲んで来る。

借りてまで飲むことをやめるように言っても馬耳東風だ。

どうしたものだろうかと対策を考えはするが、飲みに誘ってくる人は一人ではなく、それを突き止めるのは困難で、誘ってくれるな、お金を貸すなと伝える事が出来ないのである。

Tには、お金を借りる事の恥ずかしさが既に微塵も残っていない。
それだけではなくて、1000円の価値も判らなくなっているし、ギャンブルに使っていない事、万単位の借金ではない事が言い訳になっているのだ。

「人に借りてまで飲むの止めないと。借りたら返すって言ったって、返したら家計が回らなくなるんだよ。」

T「うんうん、もう止めるつもり」と笑う。

…つもり… 毎回これだ。そして、実はそんなつもりがない事は、見ていれば判る。

つもり…つもり…と言いながら、目はテレビに向いていて、口はお菓子を頬張っている。

頂き物のお菓子よと伝えても、誰からなのか、何故下さったのかには全く興味を示さない。

ヤドリギのオトウが、9月に忘れずに買いに走ってくれていることも、Sちゃんが、一所懸命に梱包してくれることも、それがTも食べられるように3人分送ってくれていることも、そのありがたみに感謝する心が無いのである。

だから当然ながら、日々の献立に苦心している事や、掃除や洗濯をこなしながら遣り繰りしているアタシにも関心は無い。

癖や習慣にも良し悪しがある。

Tの借り癖、浪費癖は、ギャンブルをするようになった過程でついた悪しきもので、ギャンブル依存症と同じで不治なのではないかと思えて仕方がない。

自覚をすれば改めようもあるだろうが、本人には相変わらず自覚が無い。

ひと言でも注意を促す人間がいるうちは、馬耳東風で済むだろうが、そのうちに誰も何も言わなくなる。

自省もしない。
感謝も出来ない。

お金だけではなくて、失った様々に気付くきっかけ無いままの日々が過ぎて行く。

この人は昔とは別人なのだと痛感せずにはいられない。

2017年8月16日水曜日

ある男の物語り 226


お盆休み最終日となった。

結局、Tは休みを取らなかった。
1月3日から、1日も休んでいない。 

今日で226日の連続出勤となった。

夏休みは?と訊いたら、14日と15日だと答えていたが、休まなかったのである。

アタシ「夏休みじゃないの?」

T「 来てた来てた、僕の他にも一人来てたよ。」
嬉しそうに答えた。

全く疲労している様子は無く、元気そのものだ。
帰宅してからも、食欲旺盛でよく食べる。

そして、寝付きも良く、アタシや大きい姉さんよりもずっと早く眠りの世界に落ちている。

それでも人間なのだから、少しは疲れというものが溜まるはずだ。
体調は大丈夫なのだろうかと、様子を見ているのだが、全く問題なしだ。

数日前は、食後にテレビを観ていた。大きい姉さんも、同じテーブルの椅子に座っていた。

その時である。

Tはおもむろに腰を斜めにして、おならをしたのだ。

大きい姉さん「ちょっとさ、やめてくれない?」

T「ふふふふっ。。ごめんごめん。」

大きい姉さん「ふふふふじゃないでしょう。。。」

この調子だ。楽しそうなのである。

明日は出張だ。
この様子で行くと、年末まで休まないかもしれない。

若い頃から、家でじっとしていられないタイプではあったが、驚異的である。

職場以外の所をうろついているのでは・・・と思ったが、帰宅の知らせは、職場の固定電話から来るのだから、やはり職場に居るのだろう。

小遣いを使わない日が多い。
つまり、ボーナスの後からは、パチンコ屋へは行っていない。
しかし、全く辛そうな様子は無く、むしろ機嫌が良いのだ。

ギャンブルについても、今の状態についても、債務返済中であることについても、あらゆることに苦悩が無いのである。

唯一の不満は、駄菓子やアイスなどの副食が常備されていないことのようだ。
食後に食べたいらしい。

時々は食費から買うのだが、無くなるスピードが速すぎて、常備できないのである。



2017年7月28日金曜日

ある男の物語り 逆説的手法で導き出された答え


Tの職場では、年に1回、メンタルヘルスチェックが行われている。

結果は自宅に郵送されて来る。

まず、客観的に診た身体の不調感。
全く問題なく、絶好調の100%に近い。

マイナス思考、心配や不安、それらを含め、全て平均を上回る値だ。

職場での孤立感と、飲酒のトラブルの二点が、平均より若干下回っているが 、気分の安定傾向に至っては、これも100%に近い。

2枚目は仕事への活力の傾向だ。

自分自身への評価は高いが、粘り強さ、仕事に対する取り組み方、几帳面さ、全てが平均を下回っている。

3枚目は、職場の環境だ。
この仕事が自分に適していて、更に、職場で評価されているという満足感が非常に高い。
平均を下回っているのは、チャレンジ精神と、将来への不安だ。

最も低かったのが、家族との関係であった。

最後にアドバイスが書かれている。

[慣れ親しんだ物以外への興味が低い。 芸術等へ関心を向ければ、より楽しい生活になる。
面倒に感じる事を避けて、誰かがやってくれれば楽だと思っていたら、経験も自己管理も出来ない。自分の事は自分でやりましょう。
マイペースは決して悪くは無いが、スピードが求められる仕事に対応出来るようにする事も必要。]

以上だった。

Tは、お正月の3日から、1日も休みを取っていない。
風邪で半休した日が1日あったきりだ。
おまけに、早く出かけて、帰りはほぼ九時過ぎなのだ。

通常ならば、過労死だ。

にもかかわらず、身心ともに好調であり、疲労感も無く、気分が安定しているわけだ。
それなのに、仕事への活力が低い。
相反する非常に奇妙な結果だ。

逆説的手法で考えてみることにした。


Tは職場が好きで、とにかく出勤する。
休む方がストレスなのだ。
たまには休めば?と言っても、休まないので言うのを止めてしまったくらいだ。

しかし、仕事が忙しいわけでもなく、特に意欲的なわけではない。
職場が好きなのと、仕事が好きなのとは、通常はほぼ同じなのだが、Tは、職場に居る事が好きなのであって、仕事が好きなわけではないのだ。
むしろ、誰かがやってくれれば楽だと思っている。

休みが無いわけだから、当然、家に居ない。
家族との関係の値が低いのは当たり前だ。

つまり、Tにとっては、職場が家なのではないだろうか。
上司や同僚、部下が家族だ。
そして、家庭は職場なのだ。
アタシは上司であり、大きい姉さんは、ライバルのような同僚だろう。

家庭という職場では、細かいお金の計算もあり、規律が厳しい。
お風呂に入る、着替える、食事をする、片付ける、寝る、全て仕事なのだ。
債務返済プロジェクトチームに配属されてしまったような感覚だろうと思う。

こう考えると、今回の結果に納得が行く。

通常であれば、成立しない状態だ。

何故成立するのか?

それは、職場が、Tの在り方を認めているからだ。
そのくらい、特殊な職場だという事になる。
実際に、Tがギャンブル依存症だと知っている人が職場に居るが誰も咎めない。
極端に所持金が少ないことにも気付いている筈だ。
それでも、飲みに誘い、度々飲み代を立て替えてくれる人まで居る。

温か過ぎる目で見守り、給与までくれるのだ。

ギャンブル依存症を克服する為には、共依存者に対抗する必要がある。
共依存者から自立しなければならない。
Tが対抗しなければならないのは、職場なのではないだろうか。
あまりにも甘やかし過ぎだ。

Tが、ギャンブル依存症を自覚し、底を経験するとしたら、この職場を退職した時だと思えて仕方がない。

職場という大切な居場所と家族を失う事になるからだ。

家庭という職場の方も退職だ。

もしも再雇用があったならば、それは約8年先という事になるのである。

2017年7月16日日曜日

ある男の物語り 帰省ならず

6月のボーナスで、やっと帰省可能の貯金が出来たT。

予定していた使途は、2泊の帰省と、壊れてしまった電気シェーバーを買うことだった。

行きは夜行バス。安宿に2泊して、帰りは新幹線。そして滞在費。

今月の5日、先に姉から希望されたパシャマなどを送り、その送料、チケット代、宿泊予約をしてから、量販店でシェーバーを買ってくるとの事で、通帳とカードを渡した。

 数日おきに、手配は済んだの?と訊いていたのだが、返事はまだだとの事だった。
今朝は、シェーバーを買って、通帳とカードを戻すように伝えた。

先程帰宅したのだが、手ぶらだ。

買わなかったの? 帰省は27日からよね? 混む時期だから空きが無くなるんじゃない? と訊ねた。

T「和歌山は止めました。そんなに重病じゃないからさ。」

アタシ「あら!そうなの? 何十年振りかで和歌山のお土産楽しみにしてたのに。 ヤドリギにも送るよって言っちゃったのよ。」

そのようなやり取りの後に、Tは言った。

「郵便局の通帳は自分で管理しますから。」

アタシ「そういうわけには行かないの。3月にギャンブルに使ってしまった時にも伝えたよね? 債務を完済するまで、家計は私が管理するって。同居する時によく話し合って決めた事。 決めた事は守らなければ意味がないのよ。 貴方が貯金を使い果たしてしまうとね、家計からお金を捻出しなければならない事態も起こるかもしれないの。 それは出来ないの。 これはね、約束なの。解る? 私は、私自身と約束をしているのよ。 決めた事を守る約束を自分としているの。私は私を裏切らないのよ。」

Tから通帳とカードが戻された。

残高 1566円になっていた。

チケットも無し、宿泊予約もされず、電気シェーバーも無い。
では、ボーナスで貯めた8万円は何処へ羽ばたいていったのであろうか。

スロットマシンの餌代に消えたのだ。

会うのを楽しみに待っていたであろう故郷の姉、お土産を楽しみにしていたアタシと大きい姉さん。
ヤドリギのオトウとSちゃんだって、知らぬ土地の銘菓を楽しみに待っていてくれたと思う。

そういう人々の気持ちを慮る事をせずに、ギャンブル依存症に冒された脳は、貯金の殆んどを機械に食べさせてしまったというわけだ。

「無くなっちゃったから、帰省出来ないね。じゃ、また通帳とカードを預かるね」

使途は訊かなかった。
何か言われると思っていたらしいTは、急に明るい顔になり、机に置かれた おかきをポリポリと食べながらテレビを見だした。

「今日は孫のマコシンと留守番をしたんだよ。たくさん喋って楽しそうだった。小さい姉さんも来たんだよ。ヤドリギからいただいたおかきだよ、それ。」

返事が無い。
イヤホンをしているのだ。本当はイヤホンをしていても聞こえている。
聞こえないふりをするようになっている。

帰省ならず。

電気シェーバーはどうするのだろう? T字の髭反りで済ますのか。

私は守らなければ。
私が私自身と交わした約束を。

今日も無事に暮れました。
キョウモブジニクレマシタ。

明日も無事に暮らしましょう。
アスモブジニクラシマショウ。

2017年7月2日日曜日

ある男の物語り 神経質の大食漢

Tは非常に神経質である。特に、食品に関してだ。 冷凍してあるお弁当のおかずを、新しい物から持って行くのだ。 数日経つと、なんやかんやと理由をつけて持って行かない。 冷凍して、それが何であるか、解凍してみないと判らない事にも不満があるらしい。
つまり、本音は、毎日作って欲しいということであろうと思う。
丼タイプのランチボックスに乗せられるおかずには限界がある。 適量を小分けにして冷凍している。 神経質であるばかりではなく、Tは大食漢でもある。
1食分ではなくて、2食分づつ持って行っているようだ。
減りが早すぎる。
先週の事だったか、1キロ以上入った大きなアイスクリームを買った。 家計から買ったので、3人で1週間は食べられそうな特大だ。
小皿に盛って食べたら、安価な割には案外美味しかった。 翌々日、また少し食べようかと取り出したら、やけに軽い。
蓋を開けたら、もうスプーン2杯分程しか残っていなかった。
大きい姉さんに聞いたら、Tが箱を抱えて、お皿にも移さずに貪り食べていたらしい。 だから、大姉は、食べるのを止めてしまったそうだ。 口をつけたスプーンで直接食べるのを見てしまったからだ。
それを聞いたら、アタシも残りを食べる気持ちが失せてしまった。
結局、1キロのアイスクリームは、3日足らずで、殆どがTのお腹に入った事になるわけだ。
まれに買う副食は個別にしよう。或いは、小遣いの中で各々が買う方が良い。 Tには分配する意識が無いからだ。
そして、神経質で大食漢のTは、最近、またゴミ捨てと食器洗いをサボり始めている。
昨夜もだ。テレビを見ながらご飯を食べていた。食器は流しに起きっぱなしだ。 お皿を洗ってね、と言ったら、ベッドの中から返事が聞こえた。「朝洗いますから」 台所が汚れていると、実はアタシは気になって仕方がない。 だが、洗いたくなるのを我慢する事にしている。 1度洗ってやると、この決め事は無かった事になってしまうからだ。 朝になり、流しを見たら、Tの使った食器は洗われていなかった。そして、既にTの姿は無かった。 誰かがなんとかしてくれるだろうという甘えは、ギャンブル依存症を病むと習慣化するそうだ。 元々が寄りかかり気質なのだから始末が悪い。
寄り掛かられ気質のアタシは、ことTに対しては、寄り掛かられる事を固く拒否している。 これは、ギャンブル依存症の身近にいる 借金の肩替りなどをしてしまう 共依存に陥らない為だ。
共依存もまた病なのだ。
依存症者から頼られる事を生き甲斐に感じる類いの人間だ。 そこにしか、自分の存在価値を見出だせないタイプの人がなりやすいそうだ。 例えば、アルコール依存者に対して、一杯だけだとアルコールを与えてしまう。また、借金をすれば、今回だけだと肩替りする。 一時的に依存症者から感謝される事で満たされるらしい。
アタシはお節介な性格だ。いくつかの共依存判定チェックシートを試してみた。
結果は、チェック項目0~2。 自立心旺盛で、共依存にはなりにくいタイプと出た。
ギャンブル依存症者との暮らしは、様々な対策と自己防衛が必要なのだ。
ギャンブル依存症のみならず、神経質とも大食漢とも闘わねばならない。
家計に関わる事だ。 攻防戦は、今年の後半戦に突入している。

2017年5月1日月曜日

ある男の物語り 世にも奇妙な領収書

一昨日の夜、Tから床屋へ行きたいと申請があった。
余分なお金を持たせないので、散髪だろうが何だろうが、事前に申請して、許可した場合には、その金額を渡す。そして、必ず領収書を貰ってくる取り決めだ。
レシート及び領収書が無い場合は、使途不明金として、翌月の給与から返済する決まり。
床屋はシャンプーや髭反り無しのカットだけ¥1080。
そして昨夜、Tが帰宅したので領収書の提出を求めたのだが、もらい忘れたとの事。

T「この頭が領収書の代わりになりませんか?」

見上げたら、頭が短く刈られていた。

アタシ「頭が領収書の代わりになると思ったの?」

T「いくらなんでも見れば判ると思ったから」

そんなわけで、保管できない世にも奇妙な領収書
を見て、雑費に書き込んだ。
通用するのは髪の毛があるうちだけだよね。違いが判らないようになったら領収書とは認められませんから。

レシートや領収書が無いと、代金は貰えないということは学んだようである。レシートを見ると、カップラーメンを買っている率が高い。
Tという男は、かなり神経質なところがあって、冷凍してあるお弁当のおかずが何だか判らないと持って行かないのだ。
食べられる物しか冷凍していませんよ、と言っても、駄目らしい。
まあ、カップラーメンは小遣いの中で買うし、レシートもあるから勝手に食べれば良いと思うけどね。

2017年3月26日日曜日

ある男の物語り 横領

3月に入ってから、Tはよくため息をついていた。夜中になってもなかなか寝付けずにキッチンで一服していると、わざわざ起きてきて、アタシの前でため息をついたり眉間にシワを寄せてうなだれた様子を見せる。そういう時は、アタシは早々に寝床に戻るようにしている。大きい姉さんが居ないか、或いは寝ている時だけの行動なのだ。今日は帰宅してご飯を食べ始めたと思ったら、Tが言った。「僕の郵便局のキャッシュカードかしてくれませんか?」

アタシ「何に使うの?出張の時にまた1万引き出したでしょ?記帳したらまたマイナス増えてもう1万そこそこしか無いよ、判ってると思うけど。」
しばらく沈黙の後に判明したのは下記の事です。

職場が本を出版して、60冊預かった。仕事の講演などの際に、宣伝販売をする目的で。本は1冊2千数百円。売れた場合は、代金を回収して職場に払う。 その本をTは何冊か売った。そして、回収した数万でギャンブルをした。したがって、職場に支払わなければならない代金が無い。何故なら、ギャンブルは負けて摩ってしまったから。
在庫の本が減っているのに入金が無い。支払わなければ使い込んでしまった事がバレてしまう。

Tがギャンブルを止めていない事は知っていた。予備資金から出して立て替え払いしている交通費等が戻らず、使途不明金がかさんでいるからだ。
小遣いの残りを貯める小銭入れの瓶も一向に増えず、むしろ減っている。

小銭を貯めるも貯めないも、アタシには関係が無いし、せっかく貯めた郵便局の貯金が無くなっても、やはりアタシには関係が無い。しかし、今回は、職場に渡すべきお金の使い込みだ。数万でも、これが明るみに出たら横領罪である。横領罪には罰金刑は無く、逮捕されれば10年以下の懲役。実刑だ。

郵便局の貯金全額と、今月の小遣いで使い込んでしまったお金を支払う事にさせた。
当然ながら小遣いが足りなくなるであろう。しかし、それもアタシには関係が無い。タバコを買わなければ良いし、缶コーヒーを買わなければ良いだけだ。衣食住はあるのだから。

アタシは自分でも驚く程に冷静で冷めている。
家計の管理と家事全般を担う事はこなしているし、2年9ヶ月後には、その任務を終えて、Tとは完全に縁を切る事に決めているがら。 Tがホームレスになったとしても、以前のような情は全く湧いて来ない。
ここに転がり込んで来て1年と少し。 その間に何度も繰り返されかたバカバカシイ出来事 。 この先2年9ヶ月にも繰り返されるであろう。

お財布、食費や予備費が入ったポーチ、アタシの通帳や印鑑、さらには貯金箱までを隠しながらの暮らし。 読者の皆さんには伝わらないかもしれないけれど、病人であり、ギャンブル依存症であり、犯罪者、ホームレス予備軍を寝泊まりさせている心もちなのだ。
Tが居なくならない限り、アタシの心に平穏が訪れる事は無いのである。

2017年1月26日木曜日

ある男の物語り 為す術無し

昨年12月初旬、ミスターTにボーナスが支給された。 毎年6月と12月に決まっている。
 半期分の固定資産税を支払い、赤字になった分の補填をし、弁済の為の予備資金を確保したところ、数万円の余裕が出た。
残高0になっていたTの口座に、僅かだが定期預金をして、不測の事態に備えて一万円は普通預金口座に入金した。
昨年、九州に出張した際に、飛行機に乗り遅れ、皆な当日便のエアチケットを立て替えて買った際に、Tはカードも現金も無くて、同行した職場の人に借りるという事態が起こったからだ。
ひと様に迷惑をかける訳にはゆかない。
しかし、アタシのカードを渡すわけにもゆかない。
師走は忘年会などの飲み会が多く、家計の予備資金がギリギリになった。
 それなのに、Tは小遣いを使い果たしていた。
新年早々、給料日まで2週間近くある時点で小遣い0。
新年会等が重なり、通帳とカードを渡した。
昨日がやっと給料日だったので、2月までの割り振りをして、やっとまた小遣いを計上した。

アタシ「次の給料日まで考えながら使わないと、また途中で無くなるよ。無くなっても使途不明なお金は渡せないんだからね。」

T「解りました。」

アタシ「じゃ、通帳とカードを返してね。何かあった時に渡すから。」

T「………」

何度か催促して、やっと備蓄した通帳とカードを受け取った。

使っている。
普通預金残高0どころか、数字にマイナスがついている。
つまり、数万円の定期預金からも引き出している。 年末から数千円づつで、1月24日は1日5回も引き出しているのだ。
1日に5回もATM?
ギャンブルだ。

アタシ「パチンコだね、この引き出し方は。」

T「……戻すつもりで……」

アタシ「貴方が不測の事態に使う為の貴方の貯金なんだからさ。それで良いと思うならば好きなように使いなよ。無くなっても補充は出来ないけどね、6月まで」

為す術無し。

アタシはミスターTのギャンブル依存を治そうなんてことは考えていない。
アタシと大きい姉さんのお金を使わなければそれで良いと思っている。
困るのはT本人なんだから。
時々確認すると ギャンブルはやっていません!と答える。
そういう嘘と、残業したふりをして、遅い時間に帰宅する旨のメールが来るのだけが、腸がニエクリカエルように腹立たしい。

メールは毎日[終わりました。職場を出ます。]

職場を出るんじゃなくて、パチンコ屋が閉店するんだろうよ?
時計を見れば、あ、今日はパチンコだな…くらいのことは容易に察しがつくのである。

今年から、9時を過ぎたらご飯は自分で温めて食べるように伝えた。
帰りますとメールすれば、帰宅した時にご飯が並ぶと思ったら大間違いだ。

為す術無し。為す術無し。
年齢から考えると、ミスターTの真っ当な人生ってやつはもう取り戻せないと思う毎日なのである。

2017年1月3日火曜日

ある男の物語り  2つの症状



 昨年は28日が仕事納めだったミスターTの休暇は、29日から4日までの7日間。

29日出勤
30日出勤
31日出勤
元旦 朝から行方不明
2日 出勤
3日 出勤

上記のような状態が続いている。
異常である。

Tに顕著な2つの症状がある。
1つは 睡眠時に唸る カタスレニア 。 
色々な説があるようだが、体質なので治療法は無いようだ。
ウ~ッ・・ウ~ッとかなりうるさい。
そしてもう1つ。
前にも書いているが、休みを取らないのだ。
出勤時間もどんどん早まり、とにかく職場に出かけてゆく。

積もりつもった仕事を片付けなければならず、
忙し過ぎてワーカーホリックになるサラリーマンは多い。
休みたいのに休めず、うつ病に発展する事も多々あるようだ。
家族から見ても、過労死を心配するほど疲弊が見て取れるらしい。

しかし、Tの場合は違う。
全く疲れた様子はなく、ただただ職場に向かうのである。
これは 休日恐怖症 と呼ばれるものに近い気がする。

職場で仕事をこなしているのかというと、疑問が残る。
365日のうちの364日をかけなければ終わらない仕事など聞いたことが無い。
それに、疲労感が見えない訳だから、とにかく出勤したという事実が重要らしい。

帰宅前に 「終わりました帰ります」 というメールが来る。
その時間は決まっていない。

お正月休みくらいは、このメールを受け取りたく無いし、
食事の給仕も後片付けも一度に済ませたいと思っていた。
その旨伝えると、「解りました」 という答えが返ってきた。
しかし、実際は上記のような状態で、昨日の夕飯時にはまだ職場に居たのである。

終わりました帰ります とメールすれば、家に着いた時に、
温かい食事が365日並ぶと思っているのだとしたら恐ろしい。
アタシは無休のお手伝いさんじゃないのだ。
それに、ここは賄いや掃除洗濯までしてくれる高級独身寮でもない。

昨夜はそのことをビシッと伝えた。

しかし、今朝もミスターTのベッドは空っぽである。
夕食に間に合う時間に帰宅するかどうか・・・不明なのである。






2016年11月20日日曜日

ある男の物語り  重症


 昨日の事。
仕事に行く途中で、初台にある動物病院に寄り、パズーのてんかん薬をもらってくるようにミスターTに頼んだ。
職場が新宿なので、何度か頼んだことがあり、保険証と5000円を持たせた。

夜9時頃に帰宅。
アタシは温めた餃子やらスープやらをテーブルに並べた。

ミスターTは、パズーの薬を出しながら言ったのである

ミスターT「スロットやっちゃいました。すいません」
アタシ「え!!お金は?」
ミスターT「お釣りで。。」

パズーの薬は保険がきくので1685円だ。
これはアタシがパズーに何かあった時の為に貯金してある中から毎回払っている。
つまり アタシのお金だ。
その事を解っていて、お釣りを全部スロットですって帰ってきたのだ。

実は、ずっと家計簿をつけていて、毎月仮払いしている仕事の交通費に違算が生じていた。
最初は数百円だったが、マイナスを翌月に繰り越していくうちに、職場から支払われているはずの交通費がマイナス1万を超えていたのだ。
そのことを何度が問い詰めたが、おかしいな・・・と首をかしげるばかり。

ちっともおかしくないのである。
清算されたお金をギャンブルなどに使っている本人はミスターTなのだから。
判っていてしらを切っているわけだ。

しかし、今回はアタシのお金なのである。
パズーの為のお金なのだ。

それが判っていて使えるとはどういうことなのだろうか。

ミスターTのギャンブル依存は重症なのだ。
人のお金も平気で使えるし、嘘をつくことも平気になっている。

大きい姉さんが切れた。

その時、パズーが発作を起こした。

パズーを介抱している間に、ミスターTはバクバクとご飯を平らげ、
「いまのが発作なの?」と興味なさそうに言い、その5分後にはいびきをかいて寝ていた。

もう何かを頼むのは止めよう。
今日から、小遣いはレシートの提出を義務付けた。

アタシは、重症になっているミスターTのギャンブル依存を治す手助けをするつもりはない。
それよりも、一刻も早く この住まいのTの持ち分を抹消し、所有権移転をする方法を考えなけれなならない。 
大きい姉さんも小さい姉さんも、ミスターTがホームレスになっても、もう何とも思わないと言っている。

アタシはパズーが心配だし、穏やかに暮らしたいのだ。
Tへの情も無いのである。


2016年11月1日火曜日

ある男の物語り  不思議な激励

ミスターTは結構出張が多い。
職場で災害対策関連の役職にを兼任しているらしく、今週の日曜日も福島へ行った(日帰りです)。
朝6時前に職場へ行き、同行する数人と車で行ったようだ。往復約6時間強の運転はTだったらしい。

アタシ「お腹痛いんだから運転は誰かに替わってもらえば?」
T「立場上そうはいきません」
役員だろうに…。

アタシ「何しに行くの?」
T「被災地の激励です。お土産も持っていきます」
アタシ「そう。寒いからラフで暖かい格好で行きなよね」
T「スーツで行きます。激励ですから」

帰宅は遅く夜の10時を過ぎていた。

アタシ「どうだったの?」
T「朝、サービスエリアで朝食を食べて、それから現地でお餅とか色々食べました。千円分のチケットで。」
アタシ「何のチケット?」
T「被災地のイベントで屋台が出てましたから。」
アタシ「それで激励は?」
T「そのイベントで、僕はポップコーンを焼いて売ったのよ。」
アタシ「なんでポップコーン売りになったの?」
T「激励ですから。手伝いです。」
アタシ「それから?」
T「帰りにもサービスエリアでご飯食べて、帰京してから同行者達とちょっと飲みました。
なので今日は2500円交際費にして下さい。」
アタシ「日曜日だから休日出勤手当て出るよね?」
T「出ません。僕の給料は定額だから出ないのよ」

仕事で休日出勤して手当て出ず、出費があって予備費から計上。で、往復6時間以上かけてポップコーン屋やって来たんかいな。
不思議な激励だよね。 本人に不満がないようだけど、家計から出費するのは解せません。
Tとは、どうも会話が成り立たない。
次は11月半ばに箱根。
28日に2回目の返済をしましたが、その事については全く忘れているようです。

アタシ「来年から3年間厄年だよ」
T「僕が?へーっ」
アタシ「今年は大きい姉さんが前厄でアタシは八方塞がりの厄だったの」
ミスターT「そうですか。」
アタシ「全くさんざんな1年だったよ」
T「なんで?」

お前さんが来たからだろうがよ…( ̄▽ ̄;)

2016年10月19日水曜日

ある男の物語 25日目の挫折


9月の給料日は、土日前の23日。従って、今月は10月の給料日までが32日と長い。
1日ワンコイン(500円)使う計算で15000円がミスターTのお小遣い。
実際には1000円札を渡している。
給料日にミスターTは言った
「小遣いから3000円を貯金して、残りの12000円でやりくりするよ。タバコ減らすから。」

あらそう・・・という事で、アタシは早速3000円を貯蓄し、残りの12000円を全部1000円札にして、
T専用の小遣いポーチに入れた。

使った日の残りは小銭貯蓄のガラス瓶へ。使わなかった日は繰越。

結論から申しますと、今週月曜日の段階で12000円を使い果たし、25日目の挫折となった。

サラリーマンの小遣い事情を毎年発表している新生銀行の情報を見てみた。

小遣いの平均は¥37,873 だそう。
気になる使い道は・・・

ダントツがお昼ご飯で 平均587円。 次いで、飲み代とか趣味、散髪、嗜好品と続いている。
この額から考えると、月15000円は厳しいんじゃないかと思われる方もいると思うが、
うちの場合は お昼は必ずお弁当。飲み代は交際費として別途支給(上限設定あり)。
散髪は雑費に計上。衣服等も別にしている。
なので、純粋にお小遣いとしては決して少なくはないはず。

家計簿をつけ始めて10日目くらいかな、アタシは月末まで持たないなと判ってた。
何故かというと、最も大きな出費のタバコを減らしている様子がないから。 
お釣りの瓶の小銭は増えても、1000円札はどんどん減っていくしね。

昨夜の事

アタシ「1000円札もうないよ。予備費も3000円しかないよ。どうしてだと思う?」
T 「タバコですね。」

仕方がないので、アタシの小遣いから仮払いで貸すことにして、
来月から3000円貯金を止める事になった。
そして、飲み代も足りない。
既に仮払いの上限に来ているのに、給料日までにまだ何か予定があるようだ。

アタシ「15000円の小遣いが余って、翌月に繰り越せる余剰金が出たら、その時初めてそれを貯められるんじゃない?でしょ?」
T「僕もそう思います。」

日本全体、サラリーマンの小遣い事情は厳しいという現実の中で、皆さんが真っ先に止めているのがタバコとアルコールだそう。
この両方をやめない限り、ミスターTの通帳残高はゼロのままだと思う。




2016年9月23日金曜日

ある男の物語  ガイアのモウケ(儲け)


23日、給料日です。朝9時からATMに走り、光熱費を支払ったり、パズーの保険料を入金したり。そして28日にゴッソリと持っていかれる弁済金の第1回目を振り込んで来ました。
改めて・・・根こそぎ持っていかれる事を実感。

 ガイアの夜明けって、企業戦士が頑張る様子を見せる番組があるよね。
テレビを見ないので判らないけれど、まだ続いているのかな。
感動の番組だった気がする。

ミスターTの場合は、ガイアのモウケ(儲け)です。
渋谷駅前にあるんですよ、ガイアっていうパチンコ屋が。
大小姉さんたちもアタシも、過去に何度も見ました。何をかというと、ガイアに入っていくミスターTを。
膨らんだ借金の何百万というお金が、このパチンコ屋 ガイアのモウケとなったわけです。
今のパチンコって、アッという間に何万も無くなっちゃうんだってね。
母型の祖父も、たまの楽しみでパチンコを打っていましたが、その当時は立ったままで指で球をはじくというものでした。

パチンコ屋のガイアもご商売ですから、決して悪くはないのですが、ちょこっと気晴らし・・・程度に終わらせられない人々、つまりパチンコ依存症は激増しているそう。
主婦にも居るんだって。開店前から並んで、閉店まで居るらしい。

ミスターTは生活費も出さず、自分の給与を余すことなくこのパチンコ、そして飲食、女性との交際費に使い、それでも足りなくて借金というパターンだったわけね。
偉大なる浪費家です。

ガイアのモウケ分、がっつりと返済してゆきます。あ~~~バカバカしい。

*ミスターTは、昨夜目を入れた白ダルマをベットの枕の上に貼ってました。そして今朝
  T 「昨日撮ってくれた写真送ってくれない?」
  アタシ「写真?」
  T「ダルマのだよ」
  メールに添付して送信してやったら、何が嬉しいのかニヤニヤと眺めておりました。
  待ち受けにでもして皆に見せろや!




混合

遠くに見えているのは、代々木公園の樹木だと思います。 手前側が紅葉してるね。 しかし、今日は10℃でおまけに雨です。 一気に冬になり、秋が追いつかなかったというか、季節の混合と言うべきか。 四季のある日本は、段々とニ季しかない国になって行くのではないかなぁと感じます。 ...