離れていれば視界には入らないが、見えているという事は厄介だ。
特に、1人の人間が堕ちてゆく様を目の当たりにする事は、見ていて心が沈む。
Tについて言えば、手の施しようがなく、ただただ堕ちててゆく様を傍観しているような心持だ。
元夫であり、大小姉さんの実父だ。
同居はしていても、同じ道を歩いているわけではない。
海のように広がる森林。
道なき樹海を、出口を探し求めて彷徨っているような気持ちになる。
いずれアタシは樹海から抜け出るだろう。
木の枝に目印を結び付けて、歩いている。
樹海から脱出する努力をせず、この深い森の中で、Tは人生を終えるだろうと思う。
放っておけば、雨に打たれ、やがては自然に土に還る。
それも良かろう。
だが、アタシは悩むと思う。
人間らしい弔いをするために、目印を辿って戻るかどうかを。
野ざらしで放っておくか。
屍を拾い集め、故郷へ返すか。
今はどちらとも答える事は出来ない。
その時アタシは、自分自身の人間性が問われると考えている。
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