13回というのは、ギックリ腰を経験した回数だ。
最初は23の時であった。もう立つことも歩く事も出来なくなって、タクシーの運転手さんに担いでもらって病院に運んでもらった。
ギックリ腰で救急車を呼ぶのは躊躇いがあったからだ。命に別状は無い。
なんとか受付を済ませて、医者から「ギックリ腰ですね」と言われ、理学療法科へまわされた。
移動は車椅子だった。
理学療法科で、脂汗を滴しながら施術を受け、腰痛体操を教わり、ギックリ腰になりそうだと思ったら、膝裏からふくらはぎ、足裏までを、丁寧にマッサージするよう教わった。
ふくらはぎは、第二の心臓で、血行を促すというような説明だった。
その理学療法士の男性は、いかにも楽しそうな様子で、あれやこれやと喋り続けていた。
痛みを堪えながら「はい解りました。ワカリマシタ(少し黙ってはくれませんか?一生のお願い)」と繰返す方の身にもなってちょうだいよと思ったが、驚いた事に、ほんの3、40分後には、寝かされたベッドから自力で立ち上がれ、帰りは歩く事が出来て、スタスタと階段を昇って帰宅したのである。
その理学療法士さんの話を、最近思い出した。
「手というのは、これまた見える脳と呼ばれていてですね…」
右手は左脳、左手は右脳に関係していて、両方の手を使うと良く、また指を動かす事も、意識的に行うと脳に良い影響があるというような内容だったと思う。
両親の世代の方々をはじめ、今までお目にかかった方々の中で、手先、つまり指を使う仕事や趣味を持っていらした方々は、長寿であり、往々にして穏やかで知的な方が多かった。
意識的に指運動をされていらした方も居た。
アタシは右利きなのだが、携帯は左で使う。
また、縫製の作業では、右手と左手を駆使する事も度々だ。
そうして、少し疲れたなと思うような時に、無意識で手のツボを圧していたりするのだ。
元々の[おつむ]の出来が、あんまり良くない方だから、本能的になんとかしようとしているのかもしれない。
それに、指先を使って造る作業をすると、気分が安定する事も、経験上間違いないと思う。正に手は見える脳なのだ。
ギックリ腰の方はというと、あの理学療法士さんの教えを守らなかった間に何度も痛い目に合い、10年少し前に13回目の苦痛を味わってから猛省し、腰痛体操とマッサージを継続中だ。
独自のストレッチ体操やツボ圧しも、自分を実験台にして試している。
あちこちにガタが出始め、弱点も丸見えだ。
人様を実験台にしてはいけないが、自分が実験台ならば、誰にも迷惑はかからないと思っている。
*画像
高村光太郎 [ 手]
(東京国立近代美術館所蔵)
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