2017年7月13日木曜日

一円二十銭の価値



 時折り、画集を眺める。
特に気に入っているのは、亡父が所有していた モディリアー二の画集だ。

35歳という若さで亡くなったモディリアーニが遺した絵画は、ほぼ人物画だ。

一見、無表情のように描かれている人物画ではあるが、不思議な存在感と力強さががある。
肉体とは魂の仮の宿なのではないかと感じる。

この本は、昭和八年に発行されていて、一円二十銭と書かれてある。

昭和五年生まれだった父が、この本を手に入れたのはいつの事だろうか。
上野美術学校に在籍していたころだろうか。

発行当時で千円くらいの貨幣価値のようだから、決して安くは無かったろうと思う。

実はこの画集には、包装紙でカバーがかけられている。
1985年 昭和60年 東京国立近代美術館で開催されたモディリアーニ展の包装紙だ。
大きい姉さんが生れた年である。

父は、この展覧会を観に行ったのであろう。
その数年後に亡くなっている事を思うと、好きな画家だったに違いない。

総ての物は 光と陰で出来ていると、画を教えてくれた時に言っていた。

健在だったら、もっといろいろな事を聴けたろうにと、最近思うのである。


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