2017年9月27日水曜日
右折か直進か
昼間歩いた水道道路は、プラタナスの並木であった。
大きな葉は、そろそろ落葉を始めていて、カラカラと音を立てて歩道の片隅に吹き溜まっていた。
このプラタナス並木を右折すると、パチンコ屋が2軒のきを連ねている。
人が居るのかと屈んで覗くと、高齢者に混じって背広姿、そうして若者も座っていた。
音がけたたましい。 何十年ぶりに、パチンコ屋に入ってみようかと思ったが、直進した。
せっかくの1人時間に、あの喧騒は似合わない。
そして、美しくない。
暫く歩くと、長葱専門店という珍しいお店を見つけた。
ドアノブまで長葱という凝りようだ。
閉まっていたが、ここはレストランのようで、メニューはデザートや飲み物総てに、長葱を使ってあると書いてあった。
ここに年配の女性が、やはり珍しそうに立ち止まっていて、言葉を交わした。
知人を訪ねて、池袋から来たのだそうだ。
友人が留守で、帰ろうと思ったところに、このお店を見つけたらしい。
珍しいですねとお声をかけたら、「ええ本当に。焼酎にまで長葱が入っていると書いてありますね」
創業28年らしい。
少し話してからさようならと別れて、更に直進した。
そうしたら、今度は古びたビルに、区の再生家具販売の看板を見つけた。
3階まで階段を上って展示室に入ると、数人の人々が再生家具や古着を物色していた。
しっかりとした良い和ダンスがあった。残念ながら、奥行きが深すぎる。
もう少し奥へ行ってみたら、家紋が掘られた一面鏡があった。
和ダンスは2000円で、なんとこの鏡は1000円だ。
三面鏡だったら予約したのにと思いながら、手すりに掴まって急な階段を降りた。
ほんの20分足らずの間の事である。
右折してパチンコ屋に入っていたら、プラタナスの色づきにも、長葱専門店の存在にも、再生家具の展示室にも気づかなかった事だろうと思う。
右折してパチンコを打ってみるのも良いかと思っていた。
しかし、後で思い返してみると、向こうがこちらを拒絶していた。
あなたの行く道は直進ですよ。プラタナスの下を歩きなさいと、そう言っていたのである。
限られた時間、そして、もし三面鏡だったら買っていたかもしれない2000円。
時間もお金も、その使い方は自分で決めるものだが、年齢なりに重ねた感性というものは、たとえ相手が人ではなくても、道筋を教えてくれるものなのだと知ったのである。
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