2017年10月4日水曜日

物悲しさ

アンティークの市松人形が飾られていた。

着物も帯も正絹で、明治の頃の物だろうか。

元々が着せ替え人形だから、探したり作ったりすれば、着替えが出来る。

大きい姉さんが生れた時に、亡母の友人が、赤い着物の市松人形を贈ってくれた。

これを怖がって、大小姉さん共に、触ろうともしなかった。

怖く感じる人は多いようで、調べると色々な理由が書かれている。

あらためて見てみると、怖いと言うよりも、何故か物悲しさを感じるのである。

あどけない童女なのに、物悲しい。

贈られた子供の身代わりとなって、厄除けになるからなのか、生まれながらに重い運命を背負っているような雰囲気だ。

そうして、欧米のバービー人形だとか、リカちゃん人形のような明るさがないのである。

物悲しさの裏側に、一種の孤独を感じてしまうからかもしれない。

市松人形には、お母さんやお父さんの人形は無くて、殆どが童女だ。

実に丁寧に丹念に造られているのだが、売られて行き、誰かの災難の身代わりになる。

怖く物悲しき感じても、おいそれとは棄ててしまえない。
だから、随分と長い間、しまいこんでいたのだが、職場にしていた部屋を引き払った際に、家具と一緒に引き取ってもらった。
コレクターが居るそうだ。

孤独というものは、本人にとって辛い状態なのだが、その姿を見ている人にも、悲しみの感情を抱かせるのだと思う。


家族や友人知人に囲まれて、賑やかに暮らしでいれば、幸せそうに見えるものだ。

真に孤独な人がどのくらい居るのかは判らないが、物悲しさを感じさせるよりも、幸せそうに居る方が良いに決まっている。

人は一人では生きられないのである。

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