下駄箱の整理を始めたら、塗りの雨下駄と、柾目の通った良い桐下駄が出てきた。
誰かから戴いたのかもしれないが、まだ下ろしていない。
昭和30年頃の造りだと思うが、戴いた時の記憶が無いのだ。
草履のような形をした右近下駄も履くが、普段履きにはこの二枚歯の駒下駄が好きである。
おしゃれは足元からと言うけれど、和装でも、履物に凝りだしたらキリが無い。
鎌倉彫も良いし、駿河の塗りも魅力的で、どれも欲しくなってしまう。
道路はすっかりアスファルトになってしまって、下手な歩き方をしようものなら、おろし金で大根を下ろしているように、貴重な桐が粉になってしまう。
さりとて、取っておいても、寸法が小さめだから誰も履かないから、これは思い切りよく下ろすことにしようと思う。
しかいこの雨下駄の歯の細さは、見ているだけで美しいと思う。
こんな下駄を履いて歩いていて、ある時に鼻緒が切れてスッ転んでも、殿方が駆け寄って来て、鼻緒の応急処置をしてくれて、それがきっかけで恋が芽生える年齢はとおの昔に過ぎ去った。
笑われるのがオチだ。
そもそも、鼻緒の応急処置が出来る殿方が居ないだろうと思う。
5円玉とハンカチか手拭いがあれば直せるけれど、道端でそんなことをしていたら、今の世の中では余程の変人である。
家の家紋は丸に角立て四ツ目だ。
江戸では、商家に多かったと聞く。
江戸時代の蕎麦屋のおかみかなんかだったら、似合うような気がする。
きっと商売繁盛の人気蕎麦屋になっていた筈だと思うのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。