月初の手紙が送られてきた。
文通を初めて約2ヶ月だ。
月に2回の転送に間に合うよう、返事を書くのにも慣れてきた。
今回は、富良野、大分、神戸の男性からと、千葉の女性からで、絵葉書まで同封されていた。
アタシは行動範囲が狭いから、便りの文字を読みながら、遠く見知らぬ土地の様子を思い浮かべて、空想の旅をしているような心持ちになる。
今年の富良野には、ラベンダーがあまり咲かなかったそうで、しかし、そこに住まっている方は、ラベンダーよりも金色の稲穂の波の美しさに見とれながら、稲刈りの日を待っているのだという。内地には1度も渡った事が無いから、高層ビルの狭間の暮らしが想像できないけれど、空は繋がっていますねと結ばれていた。
大分の男性は、学生時代は東京で、その後は転勤族だったそうだが、お母様の介護の為に故郷に帰り、看病しながら地元の会社で65まで勤めあげ、今は奥様よりも二時間早起きして、まだ暗い時間から朝焼けが見える頃までの一人時間が至福の時だと書かれていた。
神戸の男性も、奥様と娘さんの三人暮らしで、下の娘さんが東京に嫁いで出産したばかりだそうで、これからお爺ちゃんと呼ばれるのかと思うと、全くどんな顔をしたら良いものやら、何か気恥ずかしく、けれど、これが幸せかと思うのだそう。
千葉の若い女性は、独り暮らしで働いていて、今はお洒落な部屋にしようと模様替えに夢中なのだそうだが、真っ白な洋風のインテリアに囲まれた部屋にしたいのに、使っている食器は全部和風で、おまけに、旅先で買った思い出のお土産を並べると、まるっきりイメージ通りの白い部屋にはならないと書かれていて笑ってしまった。
生きている人々には、それぞれの暮らしがある。
そして、それぞれの暮らしの中で、何が幸せだろうと考えたり、過去や未来を思って生きている。
匿名の文通であるから、お目に掛かる事は無いけれど、皆さんがふみ人になった動機は、綴る事で自らを見つめ直し、また違った人々との交流で、きっと得るものがあるに違いないと思っている部分で一致している。
お互いの自己紹介と簡単な暮らしぶりを知り合うだけで、1ヶ月というのんびりペースだ。
数枚の便箋に書かれた手紙には、忙しなさから解放してくれる緩やかな時の流れと、人々の暮らしの重さが溢れているのである。
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