あれは確か、大きい姉さんが4年生、10歳ころの事だったと思う。
アタシが言い出したのか、本人が言い出したのかは忘れてしまったが、成績を上げるために、家庭教師だったか、トレーニングペーパーだったか、とにかく自宅で勉強してみようという事になった。
現れたのは若い男の人で、子供部屋に入り、大きい姉さんに話しかけ始めた。
鞄から出てきたのは2枚の絵だった。
一枚にはご飯とお味噌汁が、もう一枚にはステーキが書かれてあった。
「どっちが食べたい?大人になったらどっちが食べたいと思う?」
そのような事を質問したと思う。
かなり戸惑いながら、大きい姉さんは・・ ステーキの絵を指さして言った。
「こっち。」
そりゃそうだろう、とアタシも思いはしたが、実はとてもいや~な予感がした。
若い男の話は続いた。
つまりだ、一生懸命勉強してイイ学校に入って、そしてイイ会社に入ったら、イイお給料が貰える。
そうすると、粗食の極みであるお味噌汁とご飯じゃなくて、贅沢の極みであるステーキが食べられるんだよ。
これがイイ人生ってやつなんだと、力説したのである。
結果から申し上げると、家庭教師だったかトレーニングペーパーだったか、とにかくどちらも続かなかった。
却下だ。
この直後だったか、もっと後だったか、この時の事を話したことがある。
大きい姉さんは、確かにステーキの方が食べたいとは思ったが、この若い男性の話をコワイ (◎_◎;)と感じたのだ。
アタシも同じだった、なんだコイツ!? 一体何を言い出すんだと、はらわたが煮えくり返るような怒りと幻滅を覚えた。
教育とは何ぞや。
イイ人生とは何ぞや。
それはステーキを食べられる経済力や地位を築く事なのか。
否である。
断じて 否なのである。
いっぱしの大人になるために、教育は欠かせない。
人間は、己の内面と向き合いながら、自力でコツコツと学んでゆくものだ。
親なんてもんは、子供の良かれと思う部分を見つけたら、ちょこっとしたさじ加減で良さを教えてやり、それを伸ばそうと思う気持ちに気づかせてやればイイのである。
考えるという癖と、決断する勇気と、結果を受け留める心と、前進する力さえ備わればイイのである。
大きい姉さんが、この若い男の話を コワイ と感じたことは、とても重要だ。
既に、ある価値判断が備わり始めていたという事だからだ。
当時、小さい姉さんはまだ1年生で、コワイ話をしている若い男と大きい姉さんのまわりを、鼻水たらしながら走り回っていた。
奇妙な光景だ。
大小姉さんのその後は・・
ご飯とお味噌汁の有難味も知り、時にはステーキも食べられる大人になった。
選択の自由を手に入れている。
それでイイのだ~。
* 学歴社会なんだという事は、アタシも知ってますよ。
①電車に乗っていた時に、お受験ママグループの会話が聞こえてきた。
「子供はさ、泥んこにまみれて遊んで元気なら良いっていうお母さんいるじゃない?そういう家の子ってさ、大抵 バカだよね。」
「うんうん、そう思う、正直」
この会話を聞いたとき。
②それから、小さい姉さんが 難関大学に合格した時。
誰かに言われた。
「ツテがあったんでしょ?おいくら位払ったの?」
高卒の両親から 大学へ行く、それもそこそこ名の知れた大学へ。
それはアリエナイ事だったのだろう。
それはアリエナイ事だったのだろう。
どひゃ~~~と思った。あんたらマジ? そう思ったのである。
ま、率直な意見ではあるし、悪気はないんだからイイけどね。
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