2017年2月15日水曜日

歳月不待

お父さんご無沙汰してます。
あれから18年が経ちました。
お母さんが居なくなってしまってからのお父さんは、もう生きる気力を失っていたね。 晩年の6年間に、お父さんが心底楽しく笑っている顔は1度も見なかった。
母さん かあさん カアサンって、ずっと若死にしてしまったお母さんの事ばかり追想していて、アタシはそれを黙って見ているしかなかったよ。

食器棚の硝子扉に額をぶつけて、傷口から出血したのを消毒して絆創膏を貼ってあげた時に、「おまえじゃなくて母さんに手当てしてもらいたかった」って言ってたね。そして「おまえ、手当てって知ってるか?医学的な治療じゃなくて、人の手が一番傷や病気に効くんだよ。」
アタシは あ~ぁ、また持論が始まったか…と苦笑いしたけれど、お父さんはあの時に、もう人の手の温もりや体温を感じる事を諦めて、更に言うなら拒絶していたんだね。 お父さんを癒せるのはお母さんしか居なかったからさ。
アタシが19歳で結婚を決めた時に お父さんは「さて吉と出るか凶と出るか」 たしかそう言ったと思う。 ご覧の通りの有り様で暮らしています。

お母さんが亡くなった後に、アタシが お母さんが欲しいと言った器を、当時はちょっと高価で買ってあげられなかった事を悔やんでいたら、「まだ売っていたら買っておいで」と言ってお金を渡してくれたね。 五客揃えの手描きの器は、バラ売りになってしまって二客残っていたので買い求めました。
母さんが好きそうな優しい柄だと、この器を見て言ったね。お父さんの食器棚に並べようとしたら
、「おまえが持っていな。2階に飾っておけば良い」と。
お父さんには、もっともっと沢山、お母さんに対して悔やまれる事があったんだと思います。
そちらでまた、嫌がるお母さんを追いかけ回しているんだろうね。
追いかけるのは良いけれど、お母さんに無理矢理 薩摩芋を食べさせようとするのは止めた方が良いよ。お母さんは戦後貧しくてさ、薩摩芋ばかり食べなければいけない時代があって、「薩摩芋なんか金輪際見たくもない!」って言ってたんだからさ。
何でも直ぐに新しい物を買おうとしないで、気に入った物は壊れても大事にしろとお父さんが言ってたから、アタシは今、お気に入りの部屋を自分で手入れしています。 お父さん好みではない、むしろ バカだ!と言われそうな雰囲気にね。
2月15日 父の命日。歳月不待
毎日懸命に生きています。
ではまた。来年ね。

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早く着き過ぎた

銀座で休憩中。 早く着き過ぎた。 しかし、なんでイッセイミヤケのバッグ、行列出来ているんだろう。