2017年2月24日金曜日

洗い張りとお仕立て直し

K子ちゃんのお着物です。
洗い張りとお仕立て直しをすることになりました。
洗い張りとは、着物を解いてから洗い、お仕立てする前の状態に戻します。表地も裏も全部解いて洗います。
縫い目などの線を筋消しできますので、とてもきれいに仕上がります。
それが終わりましたら、お仕立てさんが一から縫い直して下さいます。

オレンジの方は江戸小紋です。加賀前田藩の定め柄 菊菱 が染められています。
遠目には無地に見えますが、格調高い柄なのです。
薄紅の方は、雲取りという暈しに染めた後、撒き糊という手法で、細かな雪のような柄を染めてあります。二度染めの付け下げです。
どちらもアタシのお気に入りでしたが、大小姉さん達には身丈が足りず、お着物好きなK子ちゃんにお譲りしました。
こうして大切に着て下さると嬉しいものですね。

お仕立てのIさんは、もう70を超える年齢になりました。
和裁の学校に通ったのは、お父様が「お前は不細工だから嫁の貰い手が無いかもしれない。自分の身は自分で立てろ」と言ったからなのだそう。(実際には結婚されました)
そして、卒業試験の時には、着物を一着仕立てて提出するそうで、その反物は自前で準備することになっているのですって。
生徒さんは皆な、良い反物を選んで臨むわけですが、Iさんのお父様は 洗い張りしたお母さまの着物で卒業試験に臨めとおっしゃったのだそうです。
新しい反物を縫えると楽しみにしていたIさんは、泣いて抗議しました。
その時にお父様は 「お前はこれから、人様の大切な着物を仕立てる仕事をするのだ。庶民は皆な、洗い張りをしながら着物を大切に着ているだろう。仕立て直しの仕事の方がずっと多いのだから、これで提出しなさい。」と。
無事に和裁士となったIさんは、今でも、細かいほつれや直しなどの仕事を何でも引き受けてくださいます。
お父様は腕の良い大工の棟梁でした。小さな補修の仕事も手抜きしなかったそうです。
そして、Iさんの旦那様も腕の良い大工さんで、今は引退されています。
旦那様はお父様の一番弟子で、こいつと結婚しろと言われて嫁いだのですけれど、Iさんは、洗い張りの着物は良かったけれど、亭主は駄目だったと笑っています。

お姑さんのお世話と家事育児、色々ご苦労の多い中で、和裁のお仕事は生涯現役で続けていらっしゃいます。


 

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早く着き過ぎた

銀座で休憩中。 早く着き過ぎた。 しかし、なんでイッセイミヤケのバッグ、行列出来ているんだろう。