ふわりとした風合いの、この生成り地の着物は、越後の十日町紬で手織り。
織り出されているのは、鼓と冊子の柄である。
背丈があり、裄も長い大姉と共有出来るのは帯だけで、着物はどうにも寸法が合わない。
自分で買い求めるから、見立てをしてくれと頼まれたのである。
背丈があるということは、このような大きめの柄が飛んでいても、柄が隠れてしまう事が無く、逆に 着物が見える面積をぐっと引き締めてくれて着映えがする。
1度も袖を通していない仕立て上がりの保管品を、お安く譲っていただいた。
年齢を選ばないから、20年は着られると思う。
さて、大きい姉さんは、果たしてどのような帯を合わせるだろう。
こればかりは好みがあり、合わせ方のコツくらいは教えるが、そこから先は黙っているつもりでいる。
人の想像の世界に踏み込むのは野暮というもので、決めるまでの楽しみを奪ってはいけないのである。
しかし、自分だったら…と、人の着物で帯合わせを楽しませてもらうのは邪魔にはならない。
だから、着物好きが増えると、楽しみが倍増して行くわけだ。
大きい姉さんと同じ歳の頃、アタシは既に2児の母であり、大きい姉さんはもう10歳、小さい姉さんも小学校に上がっていた。
入園から卒園、入学式などは、いつも着物と決めていて、普段もよく着物を着ていたのである。
従姉妹の婚礼に列席するために、初めて白生地から染め誂えた訪問着の柄が鼓だった。
流石に赤いと思うものは、惜しむ事無く生徒さんにお譲りしたのだが、織りの着物は未だに現役で着ている。
変わったのは、移ろっていた好みで、今は迷うことなく定まっている。
洋服は、普段もよそ行きも山のように着て破棄してきた。そう考えると、着物は実に経済的なのである。
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