2018年7月25日水曜日

7月の雨

灯りを落として、眠れない時間を持て余していたら、雨に気が付いた。

雨?そう思ってカーテンを避けてみたら、確かに降っている。

7月の雨。

灼熱の日々が続いていたせいか、ふっと安らいだ気持ちになって雨音を聴いている。

厚い雲が動いたのに違いない。

新宿の高層ビルが霞み、大粒の滴が窓に打ちつけている。

そう、子供の頃から、雨音が好きだった。
特に、深夜の雨が良い。

これから何処かへ出かけるわけでも無く、眠るだけの時間に聴く雨音は、ザワザワと疲れた心を鎮めてくれる。

眠くて床に入り、直ぐに寝付ける人を羨ましく思うけれど、もう何年も何年も、簡単には眠りに落ちる事が出来ない。

特にここ数日は、3時、4時になっても冴えざえとしている。

昨夜も、とうとう明け方になって、すっかり眠りを諦めて横になっていた。

今夜も眠れないかもしれないと思いながら、身体だけを横たえていたところに雨だ。

あれはいつの事だったか。

一人暮らしを始めて、初めての夏だったから、18だったと思う。

古い木造アパートの1階の部屋で、雨音を聴いた。
傾きかけた古い部屋に聴こえる雨は、コンクリートに打ち付ける音よりも高く、裏庭にあった木々もザワザワと鳴いていた。

時間が流れる様子を見たりイメージすることは難しいけれど、雨音から水の流れを想う事は容易く、不思議と静かな気持ちになって、生きているのだと実感した。

今日が過去になって、2度と戻れない思い出に収まって、そのかわりに、明日という1番身近な未来が近づいてくる。

その時から、30何年か分の時間が流れて、今もこうして生きている。

生きて雨音を聴いているのである。

終電だろうか?

雨音の向こうで、線路が軋む音がする。

街も静まって行く。

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