灯りを落として、眠れない時間を持て余していたら、雨に気が付いた。
雨?そう思ってカーテンを避けてみたら、確かに降っている。
7月の雨。
灼熱の日々が続いていたせいか、ふっと安らいだ気持ちになって雨音を聴いている。
厚い雲が動いたのに違いない。
新宿の高層ビルが霞み、大粒の滴が窓に打ちつけている。
そう、子供の頃から、雨音が好きだった。
特に、深夜の雨が良い。
これから何処かへ出かけるわけでも無く、眠るだけの時間に聴く雨音は、ザワザワと疲れた心を鎮めてくれる。
眠くて床に入り、直ぐに寝付ける人を羨ましく思うけれど、もう何年も何年も、簡単には眠りに落ちる事が出来ない。
特にここ数日は、3時、4時になっても冴えざえとしている。
昨夜も、とうとう明け方になって、すっかり眠りを諦めて横になっていた。
今夜も眠れないかもしれないと思いながら、身体だけを横たえていたところに雨だ。
あれはいつの事だったか。
一人暮らしを始めて、初めての夏だったから、18だったと思う。
古い木造アパートの1階の部屋で、雨音を聴いた。
傾きかけた古い部屋に聴こえる雨は、コンクリートに打ち付ける音よりも高く、裏庭にあった木々もザワザワと鳴いていた。
時間が流れる様子を見たりイメージすることは難しいけれど、雨音から水の流れを想う事は容易く、不思議と静かな気持ちになって、生きているのだと実感した。
今日が過去になって、2度と戻れない思い出に収まって、そのかわりに、明日という1番身近な未来が近づいてくる。
その時から、30何年か分の時間が流れて、今もこうして生きている。
生きて雨音を聴いているのである。
終電だろうか?
雨音の向こうで、線路が軋む音がする。
街も静まって行く。
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