2017年11月8日水曜日

謙虚という美


居酒屋さんの軒下に下げられた稲穂。

実は、稲穂を近距離で見たことが無い。

田園の地に暮らしていれば珍しくは無い物なのだろうが、田んぼなど無い都心では、稲穂を見たことが無い人が沢山いるのである。

主食にお米を食べて居ながら、全く持って情けない話だ。

実ほど頭を垂れる稲穂かな (詠み人知らず)

苗から育った稲が、こうしていよいよ収穫の時期を迎えて 頭を垂れる姿は 謙虚の美だ。

枯れた中にも黄金色を思わせる色も、姿も、とても美しい。

青々とした水田に育ち、稲は謙虚に刈られてゆく。

どうぞ私を召し上がって下さい、その為に生きて来たのですからと、稲穂の声が聞こえてくるような気がする。

老いる、枯れるという言葉を意識する年代になって、物を見た時に感じる事が、若い頃とは違ってきた。

老いてなお美しくあろうと思う時、謙虚さは欠かせないと思っている。

この美意識が、若くて可愛い事の価値観が大きい日本では、どんどん欠落していっている。

誰もが必ず老いるという事から目を避けて、アンチエイジングに必死なのは見苦しい。

どんな化粧品を塗りたくっても、時間をさかのぼることなど出来ないのである。
若さ競争はいつまで続くのだろう。

有るがままを認めて進む方が余程美しいと思っている。


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