パズーは犬だけれど、パズーには人間に勝るとも劣らない意志がある。
パズーは賢い犬で、それに頑固なところもある。
アタシとパズーには、二人にしかわからない絆があって、それは信頼と呼べるものなのである。
てんかん発作を起こし始めた小さな頃は、アタシの方が倒れてしまいしまいそうなくらいに動転したものだった。
けれど、この厄介な発作と10年以上付き合ううちに、パズーの発作には、パズーの個性が現れている事に気づくようになった。
通常、ソワソワしたりというような前兆の後に、硬直したり、四肢をバタつかせたりと、何パターンかの発作があるのだが、最初の頃のパズーは、時には1時間近くも続く重積と呼ばれる重い発作だった。
服薬を始めてもそれは変わらなかったけれど、ここ数年は、15分以内には治る軽度なものに変わった。
そして、特筆すべきことは、パズーは、意思のチカラで、発作に抵抗するのである。
立ち上がれなくなり、明らかに発作が始まっても、身体が震えても、パズーはそのまま倒れ込む事は無い。
よろけながら、何度も転びながら、アタシのそばまで来ようともがく。
頭部が震えても、首の硬直が始まっても、真っ直ぐにアタシの目を見て視線を逸らさないのである。
今朝もそうだった。
キッチンで洗い物をしていた時に、パズーが走って来た。足元に来た時には、もう自力では立ち上がれなくなっていたけれど、キッとこちらを見上げて、前脚で前進しようとしていた。
犬がてんかん発作を起こした時は、近寄らず、身体を触らず、静かに治るのを待つというのが基本の対処と言われている。
しかし、アタシはパズーを抱き上げて、布団の上まで移動することにしている。
それから座ったままの状態で、なるべくパズーに身体を密着させる態勢を取るのである。
そうすると、パズーはもう発作に身を任せて、身体をのけぞらせながら痙攣が始まり、呼吸も止まったような状態になる。
目も見えていないのか、瞳孔が開いたような感じになる。
その間、アタシはずっと同じ態勢でパズーを抱っこしたまま、大丈夫、大丈夫、一緒にいるから大丈夫と、静かな声でささやき続ける事にしている。
発作中でも、聴覚はむしろ研ぎ澄まされていて、パズーにはアタシの声が聞こえているからだ。
大丈夫、大丈夫、そう言っているうちに、ゴクリと唾を飲み込むのが判り、その後にハアハアと呼吸が戻ってくる。
それから少しすると、身体の硬直が解けて、パズーがくったりと脱力するのが判る。
それでも暫くは、大丈夫を繰り返す。
そうすると、目に力が戻って来て、自分から首を動かせるようになる。
治ったと感じたら、パズーは何度かオシッコをするのである。
大抵は2〜3回。
それが済んだら、次は水を飲む。
かなり疲労感が残るように見えるけれど、自力で数回は水を飲みに行く。
身体に異変を感じたら、パズーは意思のチカラでアタシの元に来るのだから、アタシはその信頼に応えてやらなければならない。
いつも2人で一緒に乗り越えているのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。