近辺には八重桜が一本しかない。
今日も肌寒く、まだ辛うじて花色が見えるが、いよいよ八重も散る。
もう葉桜が優勢になって、生命力の強い花を葉の陰に隠していた。
この木の向かい側では、白のつつじが満開で、通行人の視線もそちらに向かっている。
確かに、勢いのある命は瑞々しく力強く美しい。
しかし、有終の美という別の美しさもあるのだ。
花に意思は無いけれど、与えられた命を、最後まで全うしている。
もう見上げる人も居ないからと言って、勝手に散ることはなく咲き尽くす。
人には意思があって、時に終わりを自分で決める自由も与えられている。
だからと言って、何事も安易に終わらせてはいけないと思う。
散り際、去り際にこそ、その人の本質が表れるものだ。
老いても、挫折感に苛まれても、尽きたと感じるまでは踏ん張ってみる。
その覚悟こそが、有終の美くしさに通じるのである。
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