花屋さんも日曜日はお休み 。
売れなかった鉢植えが、店の右の壁際に捨て置かれていて、枯れたわけではないから、ちゃんと育って開花している。
ポンポンと可愛らしいピンクの花は、八重の桜だろうかと近付いて見たのだが、どうも葉が桜ではない。
吉野ツツジだろうか。
花屋というのは、実は結構ハードな仕事で、男性が多い職種だ。
中学の同級生は、今は郵便局に転職してしまったが、高校を卒業してすぐに、茶席の花なども扱う老舗の生花店に就職した。
仕入れもすれば、市場から運んでくる仕事も、それらを長持ちさせる為の水切りも、特に鉢物や枝ものは、力仕事なのだと言っていた。
一年中水を使うから、手も荒れる。
彼は、成績もふるわず、スポーツで目立つわけでもなく、決して男前でもなく、目立たない少年だったから、当時は殆ど話をしたことが無かった。
それが二十歳になった頃だったか、同窓会の幹事として連絡をくれた事がきっかけで交流が始まったのである。
ずっと母子家庭で、狭いアパートにひっそりと暮らしていた。
縁にも恵まれずに、独身のまま、毎日花屋に勤め続けていた。
彼から届くメールは、1年に数回程なのだが、必ず詩が書かれていて、その詩が優しくて良いのである。
だから、ボエムのKちゃんと呼ぶようになった。
何年前の事だったか、長く勤めた花屋さんが店仕舞いをしてしまった。
なかなか転職先が見つからないらしいと、別の友達から聞いて、暫く音信が途絶えていた。
それが一昨年、郵便局に入る事が出来て、またこつこつと真面目に働いている事が判ったのである。
そして、花屋の時代から少しづつ貯めた貯金で、小さな一戸建ての家を買った。
年老いた母親をあちこちに連れて行くために、軽自動車も手に入れて、その車を買うときには、車の販売会社に勤めている同級生に連絡があって、彼の営業成績に貢献したのだと聞いた。
結婚は諦めたと、ポエムのKちゃんは言っていたけれど、毎年の同窓会の幹事はKちゃんと決まっていて、それは、皆からの絶大な信頼があるからなのである。
真面目て優しくて、綺麗な言葉を綴る事が出来るKちゃんも、そんなふうに時間をかけて、その人間性を静かに開花させたのだと思う。
春が大好きで、それは明るい花々が一斉に咲くからだと言っていた。
高齢のお母様にしてみたら、そんなKちゃんは、本当に親孝行の自慢の息子に違いないのである。
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