忘れえぬ味

ビーフシチューにしました。寒いからね、今夜は。

遥か昔、貴金属業だった父の仕事場が上野界隈であったので、母に連れられて行ったのが
松坂屋です。

松坂屋の上にあった　銀サロン　という洋食屋さんは、母が舶来品売り場などであれこれと良さそうな物をお買い物している　ひどく退屈な時間を我慢するに充分過ぎるくらい　すべてのメニューが美味しかった。

必ず注文したのがポタージュスープで、それにエビフライだとか色々、何もかもが美味しかったんです。

百貨店の中の食堂な訳ですが、この銀サロンは、テーブルに真っ白なジャガード織のテーブルクロスがかけられていて、フォークやスプーンのようなカトラリーも純銀だったと記憶しています。

上品な母娘が隣のテーブルで　「いかが？」　「お母さん、温かくてとても美味しいわ。」などと会話していたり、　奥のテーブルでは、今思えば　お見合いをしている様子の人々も利用していました。

母は決まって、ビーフシチューを注文していました。
懐かしいです。

最後に行ったのはいつだったかな。大小姉さんを連れて行ったと思うんだけど。

仕事、松坂屋で買い物、銀サロンでお昼ご飯、アメ横へ寄って、名前は忘れてしまったけれど、甘味処にも寄りましたね。

銀サロンのビーフシチューにはトロリと生クリームがかけられていたと思います。
無いのでクリームチーズをヒトカケラおとしました。

私が一番安心して、何も考えずに幸福だったのは　あの昭和40年頃の子供時代かもしれない。
皆な同じか。
親という存在に守られてね。
良い時代でした。

＊　銀サロンは一昨年リニューアルしたようで、昔の雰囲気が保たれているかどうかは確かめていません。だけどきっと味は変わらないと思う。