ある男の物語り

人物像

債務を整理するための必要書類等を持って、午前１１時きっかりにミスターＴは現れました。

今日はミスターＴの人物像をお話しします。
生まれ育ったのが本州最南端和歌山であるせいなのか、良く言えば明るくおおらか。悪く言えば能天気です。
何事に対しても深く思い悩む事は少なく、ポジティブです。 読書を含め、勉強などは嫌い。しかし、読んでいるフリは出来ます。読書をしている自分が人からカッコヨク見えるかどうかが重要のようで、そういう自分に酔えるタイプです。長身、贅肉無し、自分の容姿に自信があります。自分を好いてくれる人が大好きで、自分を好かない人が大嫌いです。
書ききれない…

さて、最初に鞄から出てきたのは通帳の山。ギョッとしました。殆どはゴミでした。ミスターＴは、その中から、アタシ名義の古い通帳を差し出し「アナタにあげる」と笑いました。２冊とも残高０。 そして次に出てきたのは給与明細。 年収は限りなく１千万近かったです。いつの間にか昇進していました。 ミスターＴ「僕、何でこんなにお金が無いんだろう？」
てめーが使っちまったんだろーが!!と言う言葉をアタシは飲み込みました。何にどう使っちまったのかの自覚が無い。自己管理能力の欠落。致命的です。
債務も明らかになりました。熱は７００℃に変わりありませんでしたが、借り入れ先は予想より少なかったです。 予想通り元金は減らず金利をかろうじて返しているギリギリ。
家計を切り詰める為に安アパートを探しましたが無し。３年間限定でこのマンションに住まう事になりました。給与は全額アタシが管理します。
ミスターＴは、既に昨夜から引っ越し準備をしていると聞き愕然。 他に気掛かりな事はないか？と尋ねましたらミスターＴは言いました「メダカ。もらったメダカ３０匹くらい飼っててさ〜、夏に外に出してたら死んじゃって、そしたらまたくれたの。」
多重債務者の懸案事項がメダカ。 メダカ心配する前にテメーの娘ら心配しろや！ドアホ!!と言う言葉をアタシは飲み込みました。
何がそんなに嬉しいのか、ミスターＴは山盛りの納豆丼をペロリと平らげルンルンと帰路についたのであります。ミスターＴには再婚希望の女性がいるはずで、元妻であるアタシとミスターＴが一切の関わりを持たないよう監視しているはずなのです。しかし、帰宅したミスターＴからは、使っている布団、可愛いメダカちゃん等の画像が添付されたメールが何通も来ています。返信がウザくなるほど。
※ミスターＴの画は大きい姉さんが描きました。悩み深そうに見えますが、実際はせめてこのくらい緊迫感があって欲しいという願いを込めて悩んでるふうに描かれています。