2015年3月14日土曜日

コロの思い出

コロは犬です。住んでいたアパートの入り口を出て、駅の方に向かって3分ほど歩くと柳通り(大きな柳の木があったからで、正式な名称だったかは定かでありません)に突き当たりました。その左角のお宅は、見事な薔薇の庭があったので 薔薇の小野寺さんと呼ばれていました。
コロは、薔薇の小野寺さんとは反対側にあったお宅の庭で飼われていました。
アタシが小学5年生までを過ごした町の界隈には、まだたくさんの野良犬がいて、小さかったアタシにとって、野良犬はとても怖い存在でした。アタシの家では、亀吉というカメと、リリーと言う名前の金魚を飼っていましたが、徒歩圏内にあった両親の実家でも、犬や猫は飼っていなかったし、野良犬に追いかけられたり唸られたりする経験をする毎に、アタシは動物恐怖症になってゆきました。
小学校の中庭に、鶏小屋とうさぎ小屋があり、飼育係りに挑戦してはみたものの、やはりアタシの動物嫌いは直る事がありませんでした。
コロは白くて毛足が長く、赤い首輪に鈴を付けていました。
そしてコロは、時々、首に巾着袋をぶら下げて、一人で(正確には一匹で)お使いに行くのです。 行き先は、商店街のお肉屋さんです。アタシも、お使いを頼まれて商店街に行きましたが、子供がお使いなどを手伝うのは当たり前の事でした。でも、犬が一人でお使いに行くのは、やっぱりとても珍しい事だったようで、近所でもコロは有名な犬だったのです。 コロは野良犬のように唸って近付いてきたりはしませんでしたけれど、お使いに出される時間が重なってしまうと、アタシは前を歩いて行くコロと一定の距離を保ちながら、どうかコロが他の野良犬みたいに近付いて来ませんように…と、祈るような気持ちでコロの何メートルも後ろを歩いて行きました。
動物嫌いのアタシでも、コロの利口さには本当に驚かされました。 首に下げられた巾着袋には小銭と紫色の風呂敷が入っていました(当時、結婚式に呼ばれると、引き出物の中には大抵この紫の風呂敷に包まれた折り詰めが入っていたので、どこの家にもありました)。 お肉屋さんに到達するためには、横断歩道を渡らなければならなかったのですが、コロは、車や自転車にぶつかる事もなく、時には人々に助けられたり撫でられたりしながら、ちゃんとお肉屋さんに辿り着くのです。
お肉屋さんに着くと、店主のおじさんが、巾着袋からお金を取り出し、紫色の風呂敷にコロッケかウズラの玉子フライを数個包んで、それをコロの首に結わえつけました。
そうすると、コロはもと来た道を引き返して行くのでした。
アタシは人間の子供ですから、コロのような訳にはゆきません。自分の背丈よりも高いガラス棚の向こうにむかって「くださいな〜。」と叫ばなければなりませんでした。そして、頼まれたのは、コロと同じコロッケやウズラの玉子フライでしたが、何を何個欲しいのかを正確に伝えなければなりませんでしたし、ちゃんとお金を渡してお釣りも間違いなく受け取らなければ、ヘマをやらかしたら、もう一度お使いに出される事もあったので必死でした。
そして、揚げたてのコロッケ等を持ち帰る時に限って、お腹を空かせた野良犬に追いかけられる可能性が高まるので、正に、行きはヨイヨイ帰りはコワイと速足になるわけですが、前には、のちのちと歩くコロがいるので、追い抜く勇気もありませんでした。
コロが自分の家に着くと、飼い主のおばさんが入り口に待っていて、首に結わえられた風呂敷を外していました。 アタシはそれを遠巻きに見届けてから家に帰りました。
揚げたてのコロッケはごちそうでした。コロは犬だから、アタシよりも数千倍の嗅覚でごちそうの匂いを嗅ぎながら、それでも決して帰り道に貪り食べるような事はしなかったのですから、本当に偉かったと思います。
アタシの動物恐怖症は45歳まで続き、1度も犬に触れるたことはありませんでした。それがたった1日でパズーを飼うことに決めたのは何故なのか、自分でも説明出来ません。
アタシが生まれて初めて抱っこした犬がパズーなのです。
どんなに可愛がっても、パズーがコロみたいにお使いに行ってくれる事は無いでしょう。コロはお使いのお駄賃として、あのコロッケの半分くらいは貰っていたはずだと思いますし、それ以上のご褒美を貰っても良いくらいに利口な犬でした。 パズーと暮らすようになって、アタシはコロを思い出す事が多くなりました。 今のアタシがコロを見掛けたら、並んでコロッケを買いに行けるのにと思います。揚げたてのコロッケを、帰り道に半分こして食べるかもしれません。

※コロが本当にお使いが出来るほどに利口な犬だったかどうかを疑問に思った事も何度もありましたが、誠実でおとなしかったコロの記憶は、間違いでは無かったと確信しています。近所には、人が通る度に吠えたてる犬を飼っていたお宅もあり、場所も覚えています。アタシは、コロが吠えているのを1度も聞いた記憶が無いのです。

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