2017年10月5日木曜日

おばちゃんの油彩

観てよみてよと呼び止められた。

八百屋さんの奥に、おばちゃんの油彩が置いてある。

金色の額に入れてあったから、白にしたら良いんじゃない?と言ったのを覚えていて入れ替えたらしい。

飛行機の窓から見下ろした富士の絵だ。

脳血栓で倒れて、寝たきりになってしまったおじちゃんが座っていた場所で、おばちゃんは毎日、野菜を計りにかけて袋詰めしている。

そして、ゴルフにも行けなくなってしまったから、日曜日にはパチンコをしてしまうのだ。

これではいけないと思っているから、好きな絵を描いたりして時間をやり過ごそうと必死なのである。

白い雲から覗く山頂には、雪が積もっている。

ゆっくり描こうと思っても、描いてしまうから、また時間があまってしまうと憂鬱そうだ。

近所に息子家族がいても、広い家に帰れば一人になってしまう。

もう少し大きめの額に入れて、マットの巾を広げたら、ぐんと広がりが出るからそうしたら?
そう言ったら、次の日曜日には額装屋さんに行ってみようかねと空笑いした。

おじちゃんが倒れてからもうじき2年だ。

病院に行っても、もう目を開ける事もなく眠っていて、仕方がないからすぐに引き揚げて来てしまうのだそうだ。

おばちゃんの油彩に寂しさが散っている。

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とっても分厚い油揚げを見つけたので、野菜と煮込みました。 野菜の価格は比較的安定しているかな。 シーズンのさくらんぼは、宝石みたいに箱に入れられていて、あまりに高いので、今暫く様子見です。 土曜日頃には梅雨明けになりそうだって。